【探偵はもう死んでいる】2巻のネタバレ・感想後編!シエスタの死の真相!

探偵はもう、死んでいる。
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どうもオレンジです。

「たんもし」こと「探偵はもう、死んでいる。」の原作2巻のネタバレ・感想をしていきます!

前半では君彦とシエスタの出会いが分かりました!そして《SPES》の幹部であるヘルも登場しました!引き続き過去編ですが、シエスタの死の真相は何なのでしょうか⁉

今回は原作2巻のネタバレ・感想の後半の記事です。

2巻前半を知りたい方はこちらから➡【探偵はもう死んでいる】2巻のネタバレ・感想前編!

「探偵はもう、死んでいる。」のまとめページはコチラ

注意

・ここからはネタバレを含むのでご注意ください!

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【探偵はもう死んでいる】2巻ネタバレ・感想、後編

では「探偵はもう、死んでいる。」の原作2巻の内容をネタバレしていきます!

今記事は原作2巻の後半記事です!

前半記事はコチラ➡2巻のネタバレ・感想前編!

過去~少女を拾う~

スーパーに向かっていた君彦は人気のない細い路地で、段ボールの中で女の子が眠っていたのを見かけます。女の子はまだ幼く、寝息を立てて寝ていました。

「…どうすっかな、これ」

君彦はトラブルの匂いしかしないと思っていましたが、“巻き込まれ体質”によってどうせ逃げられないと思い少女に声をかけることにします。

「おーい、生きてるか?」

「…ん、…うーん」

少女は目をこすりながら起き上がり、君彦と見つめ合います。すると少女は

「そっか。あたし襲われるんだ」

「誰に?」

「あんたによ!」

少女は君彦を睨み疑いをかけます。

「あのなぁ、悪いが俺はお子様には興味ないんだよ」

「っ!だ、誰がお子様よ!」

少女は君彦の胸ぐらを掴もうとしますが、身長差でありすぎてぴょんぴょん跳ねながら人差し指を顔面にめがけて突き刺そうとします。

「こういうときは、まずは自己紹介だ。俺の名前は君塚君彦…お前は?」

「あたしは…アリシア?」

「何故に疑問形。不思議の国から来たのか?」

君彦はさらにいろいろと質問しますが、アリシアは何も答えられなく、年齢が今年で十七ということだけ覚えていました。君彦は「絶対勘違いだから忘れろ」と言い、アリシアを警察へ届けようとします。

ですが、突然のスコールによって君彦は一旦シエスタの待つ家へとアリシアを避難させるようにします。

シエスタに見つかると面倒だと思い君彦はこっそりと家に入り濡れた服を乾かしてシャワーを浴びてから警察に連れて行こうとしました。そしてアリシアをシャワーに入れたところでシエスタが車イスに乗って何やらボウルで生地を捏ねてやってきました。

「アップルパイを作ろうかと思ってね。せっかく君が買ってきてくれるって言うから」

するとそこで第三者の声が聞こえます。

「小さいタオルとかない?」

バスタオルを巻きつけたアリシアが、ひょこっとドアから顔を出してきます。そしてすべてを察したシエスタは長い沈黙の後、君彦に向けてこう言います。

「――ロリコン」

過去~新たな事件簿~

「事情は分かった」

シエスタは君彦に侮蔑する目を向けながら事情を察します。そしてベッドに腰を掛けていたアリシアにシエスタは声を掛けます。

「本当に本名も、何も分からないの?」

「…うん。今年で十七歳ってことぐらいしか」

「なるほど、七歳」

「十七!」

アリシアは大人に見られたいようでしたが、見た目が幼いため信じてもらえませんでした。そしてシエスタはそんなアリシアを助ける為に手を貸すことにします。

アリシアには衣食住を提供し、身元を明かして見せるようでしたが、ただタダで手を貸すわけではなく、ある条件を提示します。

「アリシアには私の仕事を代行してほしい。そうすれば衣食住を提供すると約束する」

シエスタは現在怪我をしており、名探偵の仕事は休業しているのでその穴埋めとして君彦と共に仕事を代行させるようです。そしてシエスタが具体的な仕事を話す前に――

「ジャック・ザ・リッパ―が、また生き返ったらしい」

第三者の声が割り込んできて、慌てて振り返ってみるとそこにいたのはタバコを吸っていた加瀬風靡でした。

風靡さんは野暮用でまだ日本には帰っていなかったらしく、復活した心臓狩りの報告をします。ケルベロスは死んだはずですが、シエスタはヘルがケルベロスに変わって心臓狩りを続けていると予想します。すると風靡さんは――

「心当たりはあるんだな。だったらちょうどいい。実はそいつを追い詰めるのに、役立つかもしれない情報がある」

風靡さんはまだ噂段階ではありますが、《SPES》に対抗するブツの情報を教えてくれます。

「なんでも、人はそいつをサファイアの眼と呼ぶらしい」

過去~探偵代行アリシア~

風靡さんが来た翌日、アリシアは早速探偵代行として君彦と共に情報収集へと街へ出ます!そして当面はシエスタの代わりに《サファイアの眼》を探すことになりました!

アリシアは元気に出発し、子供のように街を駆けていきます!君彦は一人になると危ないからアリシアを注意しながら手を貸します。

「分かったわよ。分かったから子供扱いしないで」

「よし、良い子だ。じゃあ行くぞ」

「うん…ってだからなんで手を繋ぐのよ!また自然な動作に騙されるところだった」

そんな二人が最初に向かったのは、宝石店でした。サファイアと言ったらここしかないとアリシアの意見である。

入店後、アリシアは駆け出して「君塚!あったわよ!」と言い、宝石のサファイアを買おうとします!そしてスタッフに「現金一括で」というアリシアを君彦は必死に止めます!

「これはただの宝石だ。俺たちが探してるのはもっと別の…多分こう、アンダーグランド的な何かだろ」

「アンダーグランド……分かった!」

そう言うとアリシアはお店を出て、今度は雑居ビルの怪しげな地下の店へと行きます。扉を開けると乾燥した植物や色とりどりのお香が並んでおり、奥には顔中ピアスの穴を開いた男の店員が居ます。

「ここで間違いないわね!」

「お前の頭が間違いだらけだ」

その後もアリシアは君彦を連れまします。

「はぁ、疲れる」

実地調査というか、ただの子供のおもりだと感じた君彦はどっと疲れます。

「楽しそうだな」

「うん、楽しい」

満面の笑みを浮かべながらアリシアは

「久しぶりに外に出られたから」

疑問を感じた君彦でしたが、アリシアも「あれ、なんで久しぶりなんて思ったんだろ」と分からないでいました。

君彦はアリシアの記憶に関して時間が解決してくれるかもしれないと思い、とりあえずは一旦家に戻ります。

過去~アリシアの今後~

「それじゃ、シエスタの全快を祝して。乾杯」

賑やかなBGMが流れるダイニングバーにて、君彦とシエスタ、アリシアはグラスを合わせます。アリシアと出会って2週間が経ち、シエスタの身体も回復しました。その全快祝いということで打ち上げを昼間からずっと行っており、既に何回も乾杯もしています。

この2週間、君彦はアリシアと探偵代行の仕事をしてましたが、一の問題を解決するためにアリシアが百のトラブルを巻き起こす毎日でした。

そんなアリシアでしたが、この2週間で得た収穫もあります。それはアリシアは君彦とシエスタのマンションではなく、とある教会に身を寄せることになった事です。

「昨日教会に行ったけど、すごく楽しかったよ。あたし以外にも身寄りのない子供たちがいて、一緒に遊んで。なんか、学校みたいだった」

アリシアはまるで一度も学校へ通ったことがないと思わんばかりの言い方をします。シエスタはそんなアリシアを見て、何かを考えるかのようにアリシアを見つめます。

「にしては、サファイアの眼はまだ見つかってないみたいだけどね」

この2週間、サファイアの眼探しについては全くの結果を出せていませんでした。シエスタは本気で言っているわけではなく、ただアリシアのことを和ませようと発言しましたが、アリシアは

「…ごほん。とにかく、明日までにぜーったい見つけてみせるから!」

アリシアはシエスタに向けて指をさして宣言すると、くるりと振り返り出ていきます。

そして残った二人は、今後のアリシアのことを話し合います。

「私は乗りかかった舟を降りたことは一度もないよ」

「…そうか」

シエスタの怪我が完治したということは、再びヘルとの戦う準備が整ったこと意味します!すなわちそれは必然的にアリシアとはここで別れることになりますが、シエスタはそれをやらず、巨悪を倒すことよりもアリシアを助けることを優先させました!

「年齢も、どこから来たのかも、本当の名前すらも教えてあげられないまま手を引くなんてあり得ない――依頼人の願いは、何があっても叶えるよ」

過去~いつかこの日を思い出す~

アリシアが帰った後、君彦とシエスタはバーで未成年でしたが、「一杯だけ」とお酒を飲みました。結果、一杯だけとはならず何杯も飲み、バーからの帰宅後二人は酔っぱらっていました。

絶妙に会話が噛み合ってなく、シエスタに至ってはいつものクールなイメージもありませんでした。

「こっち、おいでよ」

「…ベッドにか?」

「うん。こっちで一緒にお話ししよう」

君彦も酔っぱらっていたので、まともな思考もなくシエスタのいるベッドに身体を滑り込ませます。

「すごく近くに君がいる。…うん、やっぱり二日経てば忘れそうな顔だ」

「酔っぱらってもそれは変わらないのな」

「ふふ、君をいじめるのは楽しいからね」

二人は酔っぱらいながらもいつものやり取りをしていきます。するとシエスタ天井を見つめながら

「君と過ごした三年間は、絶対に忘れないよ」

シエスタは「真面目な話をしてしまった。」と言い、またすぐに酔いつぶれた表情に戻ります。

そしてシエスタはすっと君彦との距離を詰め、あと数センチで鼻が当たるような距離まで接近します。ほとんど密着した状態でシエスタは―――

「――たまには、不真面目なこと、してみる?」

君彦はその言葉を聞き、気づけばシエスタの上に覆いかぶさっていました!

「シエスタ、俺は……」

「……助手」

そして、きゅっと目を瞑るシエスタ。意を決した君彦は自分の唇を、彼女に近づけて―――

過去~翌日の朝~

「ふぅ、死にたいな」

翌日、目が覚めた君彦は昨日の酒が残っていてました。隣にはスース―と寝ているシエスタがおり、昨日のことを思い出そうとすると、吐き気がこみ上げてきます。

君彦はベッドを降りたところで、起きたシエスタと目が合います。

「…おはよう」

「………。」

するとシエスタは無言のままベッドを降り、スーツケースの中から何かを取り出します。

「助手、ちょっと腕を出してほしい」

「そのぶっとい注射針をしまってから言ってくれ!」

シエスタは直近の記憶を消すことが出来る《七つ道具》を取り出し、逃げる君彦を追いかけます!そしてシエスタに捕らえられた君彦はあと一歩で注射針を刺されそうなところで、「ピンポーン」とチャイムが鳴ります。

仕方なく君彦から離れたシエスタは、ドアを開けるとそこにいたのはアリシアでした。

「ミッションコンプリートよ」

得意げに二人を見渡すアリシア。その手には小さな袋が握られていました。まさか本当に《サファイアの眼》を手に入れたのかと思うと、中から出てきたのは《眼帯》でした!

「本当に大切な眼は、そっちでしょ」

アリシアは君彦に指をさし、君彦の目に眼帯を巻きます。

「…気づかれてたか」

「そりゃ二週間も一緒に行動してたらね」

君彦はヘルとの一戦で実は左目を負傷しており、日常生活に大きな影響はないものの視力は落ちていました。なので街中でアリシアを見失うことも多かったのです。

「あるかどうかも分からない幻のレンズに頼るより、今確かにあるあんたのその眼を大切にすべきよ」

そしてアリシアはシエスタに向けて「これで正解?」と訊きます。存在しないものを見つけだせという無理難題に対して、アリシアがどんな答えを持ってくるのかが、シエスタがアリシアに向けて出した課題だったのだと。

「け、計算通りだね」

「いやだから嘘下手か」

探偵代行が、一瞬でも名探偵を上回った瞬間でした。

過去~全ての転換点~

「そんなに気に入ったの?年下からのプレゼントが」

シエスタはジト目で君彦を見つめます。君彦は適当に反論しようとしましたが、シエスタは「ごめん」と謝り、

「本当は、君の眼をそんな風に気遣ってあげるに至らなかった、自分を恥じてるだけ」

君彦は一瞬逡巡し、意外なことを言うシエスタに驚きます。

「お前がちゃんと、些末な感情に振り回される人間で、よかった」

「…そっか」

そんな時に、君彦の携帯から国際電話が鳴ります。相手は風靡さんでした。

『よぉ、くそがき。なんとか生きてるみたいだなぁ』

『風靡さん、そりゃこないだ会った時に言うセリフでしょう』

『は?いつアタシたちが会ったって?』

電話から聞こえてきたのは、君彦をからかうわけでもない純粋な困惑の声でした。

君彦は2週間前に風靡さんから《サファイアの眼》の件を聞いたと伝えましたが、風靡さん曰くは最後に会ったのは切り裂きジャックの事件を相談しに行った一回きりだと言われます。

風靡さんはあの事件の真相を聞くために連絡してきたようですが、君彦はそんな話を聞いて嫌な予感が走り出します!

そう、あの時ロンドンで2回目に会った風靡さんは偽物であり、容姿を自在に変化させることが出来る《ケルベロス》以外はいないのだと…

過去~名探偵VS名探偵

本物の風靡さんとの電話を交わした翌日、探偵事務所兼住所にて君彦とシエスタは今この街で起きている事態の整理をします。

《ケルベロス》は君彦の目の前でヘルによって殺されています。では今回の風靡さんの偽物に関しては説明がつかない。でしたがシエスタはある程度予測は立てていました。

「たとえば、あの偽物の女刑事の正体がヘルだとしたら?」

「ヘルが?でもあいつに変身能力なんて…」

「《人造人間》は、あるものを核に生まれた存在でね。その核を引き継ぐことで、特殊能力も受け継ぐことができるんだよ」

確かにヘルはケルベロスの死体から黒い石のようなものを抜き取っていました。それを回収してケルベロスの能力を奪ったと考えるのが妥当ですが、一体何のために君彦たちに接触をして《サファイアの眼》の存在を伝えたのかは分かりませんでした。

「真相はまだ分からない…とはいえ、やるべきこと自体は変わらないよ。私たちがこの連続殺人事件を終わらせる」

明日からまた忙しくなりそうだと思いましたが、ここで一つアリシアの問題が残ります。アリシアを気にしていたシエスタでしたが――

「あたしのことなら、別にいいから」

気づくといつの間にか隣にアリシアが居ました!

アリシアは二人に自分のことは置いておいて、この街に起きている事件を優先させるよう言います。むしろアリシアはこの事件について自分も手伝わせてほしいとまで言ってきました!

ですがシエスタはまだ子供であるアリシアの協力を危険だからという理由で拒否します。シエスタが復帰した以上、あくまで探偵代行であったアリシアに危険な目に合わせられないとのことです。するとアリシアは「もういいわよ」と言い――

「あたしは、あたしのやり方で動くから。この事件はあたしが絶対に解決してみせる。そうすれば、あたしは――」

と、アリシアがきゅっと唇を噛みます。そして君彦を見て

「でも、そういうわけだから。明日から頼んだわよ、君塚」

「いや、助手は、私の…私の……」

シエスタはそれ以上の言葉が出てこず、口をパクパクとさせたタイミングで、街の外からサイレンが鳴ります。

それは、五人目の被害者がヘルに心臓を奪われた音でした。

過去~ジャック・ザ・デビル~

五人目の被害者が出たことで、蘇った切り裂きジャックは衆目にも晒されることとなり人々からは《ジャック・ザ・デビル》として呼ばれるようになります。

君彦たちは、五人目の犠牲者が住んでいたという実家に来ていましたが、そこには事件のマスコミが殺到していました。

被害者家族の気持ちを推し量ろうとしないマスコミに対して、アリシアは小さな拳を握りしめます。そしてやがて出てきたのは六十歳ぐらいの被害者の母親らしき女性でした。

母親はマスコミの言及に対してなにも語らずにいました。それでもマスコミは言及を辞めずにいます。君彦たちは何とかしてマスコミを追い払うことが出来ないかと考えていた所に――

――パンッ、と大きな銃声が聞こえます。

見るとシエスタが遠くでマスケット銃を撃ってマスコミを引き付けます。そしてマスコミを上手く巻いたシエスタは君彦の下へと戻り、母親へと会いに行きます。

君彦たちは家にお邪魔させていただいて母親と事件のことで話します。

「事件の日、なにか娘さんに、変わった様子はありませんでしたか?」

「あの日は…いえ。特に変わった様子もなく、家を出て…」

「では、娘さんの遺体を見てなにかーー」

「シエスタ!」

やっていることがマスコミと変わらないと思った君彦はシエスタに注意します。そこで母親がポツリと声を漏らします。

「貰ってばかりで、何も返せない。それがこんなに辛いことなんて」

母親はそう言って、涙を流します。それに対してシエスタと君彦は何も言葉を返すことが出来ませんでしたが、そこでアリシアが「そんなこと、ない」と言います!

「貰ってばかりで、あるいは与えるばかりなんて、そんな一方的な関係あるわけない」

アリシアは立ち上がりボロボロと涙を流しながら母親に訴えます。

「あなたが娘さんからなにかを貰ってばかりだとするなら――それはきっと、あなたも今まで娘さんにたくさんのものを与えてきたから!そうでしょう!」

それを聞いた母親はふわりとアリシアを抱きしめ――

「…ありがとう。なんだか娘に言われているような気分だったわ」

過去~喧嘩~

自宅までの帰り道――

「どうして止めたの?」

シエスタは君彦に母親へと質問を遮った件について、どうして仕事の邪魔をするのかを問いただします。

「そもそもこの一連の事件は、通り魔的犯行のはずだ。だったら、被害者がいつもなにか変わった行動を取っていあたかどうかなんて質問は無意味のはずだ」

ですがシエスタは引かずに、「身内内しか気づかない特筆すべきことがあったかもしれない!」と言い、「君彦にはそのチャンスを棒に振った!」と言います!

君彦はシエスタの言うことは正しいと思いますが、それがすべてではないとも感じており迷いました。

「私はヘルを倒す為だったら手段を問わない。どんなやり方を使ってでも、必ず彼女を追い詰めて見せる。そう思ってる。」
でも、と。シエスタは寂しい声で君彦に――
「君のことはだけは、信じてたんだけどね」
どこか諦めたような悲しげな表情を浮かべシエスタは「今日は帰るよ」と言い残し去っていきます。
気まずい夜を過ごすことになりそうだなと感じた君彦は、一人夕暮れの下で溜息をします。
「それと、隠れてないで出て来いよ。アリシア」
ビルの隙間から様子を見ていたアリシアが出てきます。
「まぁ、なんだ。あんなの、よくあることだからな」
シエスタとの一件を見られていたであろうことに君彦はアリシアに気にしなくていいと告げます。
「そりゃ三年も一緒に旅をしてたらな、喧嘩の一つや二つぐらいはして当然だし、むしろしない方がおかしいというか。そもそも俺とあいつは性格も生活スタイルも全然違うし、逆によく三年も持ってるなってレベルだろ。昼寝ばっかりしてるし、そのくせ―――――――」
「うわ、めっちゃ気にしてる……」
アリシアはドン引きの表情で君彦を見つめます。
君彦は「この話はやめるか」と言い、代わりに思い出したことでズボンのポケットをまさぐります。そして取り出したブツをアリシアに渡します。
「え、これ――あの時の?」
アリシアは君彦が渡した指輪を手に平に乗せ、まじまじと見つめます。
それはいつの日か、二人で宝石店で見つけた青い石がはめ込まれたリングでした。
「まぁ、なんだ。これの礼ってわけでもないけどな」
君彦は《眼帯》を指して言います。するとアリシアは、目を瞑り、胸の前でその指輪を握りしめながら――
「――嬉しい。誰かからプレゼントを貰ったの、初めてだったから」
「アリシア、お前。まさか記憶が?」
「でも、そんな気がする。きっと私は…記憶を失う前の私は、悪い子だったんだね」
そして小さく細い声でアリシアは言います。
「指輪、はめてよ」
「俺が?」
「君塚が」
そのパターンは予想してなかったと思い、君彦はどうしたらいいのかと頭を悩ませてる間にアリシアは君彦に指をを渡し、正面に立ち手の甲を差し出します。
「はめる指間違えたら怒るから」
「…あくまでフリだからな。フリ」
なぜかプロポーズのような展開になってしまいましたが、君彦はしょうがなくアリシアの薬指に指輪を通します。
そしてちょうどその時!
「さっきは言いすぎた」
聞き覚えのある声が聞こえ、振り返ると視線を地面に落としたままのシエスタが居ました
「まぁもちろん今でも私は自分の考えが間違っているとは思わないし、そう簡単に曲げてもいいはずがないとの考えている。でも、私には私の正義があるように、君にもまた君なりの意見があるのは当然のことで…パートナーと一緒に仕事するからには―――――」
早口で喋るシエスタは、自然と視線を上げて君彦を見るとアリシアに指輪をはめる光景でした!
永遠にも続くかと思われた沈黙を乗り越えて、シエスタはにっこりと笑って言います。
「お幸せに」
君彦は人を殺せる笑顔もあるのだと思い「あー、やっぱ死ぬよな俺」と呟きます。

過去~私には君が分からない~

「おーいシエスタ。聞こえるか?」

あの衝突から三日が経ち、シエスタの機嫌は相変わらず直っていませんでした。この三日間は別行動が続いており、まったく会話すらもしていません。なので君彦はアリシアと共にジャック・ザ・デビルを追っていましたが、それすらも気に入っていない様子です。

「子供かよ」

「子供好きな君にそんな罵倒を受けるのは心外だね」

やっと喋ってくれたと思い、君彦は不当に三日間無視され続けたことに関して問います。

「いや、いるって気づかなかったんだよ。てっきり君は十三歳の女の子と結婚できる国に引っ越したとばかり思っていたから」

「そんなひとネタのために三日も沈黙を貫くな。マジで切れてんのかと思っただろ」

「いや、マジで切れてたけど」

そして君彦はあの日のアリシアの出来事をシエスタに告げます。アリシアが初めて誰かから贈り物をされたこと、そして指輪をはめたのはただの遊びでやっていたこと。
「なぁシエスタ、アリシアのことは、まだ何も分かってないんだよな?」
「さぁ、私にはさっぱりだよ」
その時、君彦の携帯が鳴り、君彦は確認します。
「悪い、シエスタ。ちょっと出かけてくる」
「こんな遅くにどこ行くの?」
「婚約者のピンチなんだ」

過去~6人目の被害者~

アリシアがいる現場に駆け付けた君彦とシエスタはの目に映ったのは、暗い路地の裏、倒れている二人の人物でした。その内の一人はアリシアであり、君彦はアリシアを抱きかかえ生死を確認します。

「…っ、君、塚」

意識はあり、君彦は急いで救急車を呼びます。シエスタはもう一人の人物の救護活動にあたっていましたが、その人物は左胸を切り裂かれていた警官のようです。防刃ベストを着ていたおかげか、命に別状はなく意識を失っているだけのようでした。

そして病院に搬送されたアリシアは無駄口を叩けるほど回復しました。同じく搬送された警官も無事のようです。

「ていうか君塚、なんですぐにあの場所に来られたの?」

「ああ、お前に発信機をつけてたからな」

衝撃の事実を知ったアリシアは食べていたリンゴを吹き出しながら――

「発信機って何!怖っ!ストーカー!」
「誤解だ、誤解。ほら、おまえってすぐどっか行ったりするからな。その予防策だ」
「ていうかいつから!どこにつけてたのよ!」
「アリシアお前、意外と派手な下着をつけてるのな」
「最悪だ!考え得る中で最悪の場所だった!」
でもそのおかげでアリシアを助けられたことでアリシアは納得はしませんが許すことにします。そして君彦はアリシアに気になっていたことを訊きます。
「どうしてアリシアは、そこまで必死になれるんだ」
それはアリシアが記憶を取り戻す為ではなく、探偵としての行動を優先させていることについてでした。
「あたしはずっと、どこか暗い場所の中にいた。暗い、暗い…光も、音も何もない世界」
アリシアは記憶を失ってから、退屈と苦痛の中にいました。でも急に君彦に助けられたことで視界が晴れ、光が差し生きなおせると思ったようです。そしてその先で新しい自分に生まれ変わるために与えられた使命が《探偵》であるのなら、アリシアはその為に生きようと思っていたことを熱く語りました。
「ちょっと喋りすぎたな」
「うん…なんか、眠い」
そしてアリシアは布団に戻り眠りにつきます。照明も落とし、君彦も少しだけ眠りにつきますが、起きた君彦はその愚行を後悔することとなります。
目を覚ますと、そこにはアリシアの姿がありませんでした。

過去~アリシアの正体

君彦は夜の街を走ります。アリシアの位置情報を探りながらアリシアのいるとある教会へと足を踏み入れます。照明も灯っていなく、ただ暗い道をスマホの光を頼りに進んでいきます。

アリシアを探す君彦でしたが、ここで何かの気配を感じます!そして君彦は近くに居た人物に銃口を向けます!

「―降参だよ。まさか君に白旗を揚げる日が来るとは。私も少し腕が落ちたかな」

「そこは素直に助手の成長を喜んだらどうなんだ――シエスタ」

君彦は銃を降ろし、ここで何をしていたのかをシエスタに問いただします。シエスタはヘルがここに来る可能性を見越して、子供たちを避難させていたようです。さらになぜここにヘルガ来るのかを問いただした君彦でしたが、シエスタは「ん?おかしなこと聞くんだね」と首をかしげます。そしてさらにシエスタに質問をしようとしたところでシエスタは――

「いつまでそうやって先延ばしにするつもりなの」

シエスタは青い顔で君彦を見つめます。そして「君も、もう気づいてるんでしょう?」と言いますが、君彦は黙ってしまいます。

「《ジャック・ザ・デビル》は、失った心臓を探している。反対に言えば、心臓しか狙ってないんだよ。」

そしてシエスタは続けます。

「アリシアはなぜ右肩に怪我をしてたの?どうして警察官に撃たれてたの?」

君彦はシエスタの言葉を聞いても納得はせず、再びアリシアを探そうとします。そしてシエスタ無視していこうとするとシエスタは――

「君も、分かってたはずだよ。だってそうでしょう?君が、あの指輪に発信機をつけていた本当の理由は――」

「やめろ!」

大聖堂に君彦の大きな声が響きます。君彦は心の中では気づいていました…

ヘルとアリシアが同一人物であることなど…

過去~もう一度旅に出る~

ヘルもといジャック・ザ・デビルの正体がアリシアであることが分かった君彦でしたが、それでも信じずにアリシアを信じていました。そして君彦はシエスタにある疑問を言います。

「けど、シエスタ。ヘルとアリシアが同一人物というのなら、あの偽物の風靡さんはどうなる?最初はあれがヘルだって話だったろ?」

「いや、アリシアこそが、ケルベロスの能力を使って変身したヘルだよ。そしてあの偽物はまた別の敵と考えるべきだ」

ヘル以上の敵がまだ《SPES》にいることを懸念したシエスタは、ヘルを探しに行こうとしますが、君彦はそれを止めます。

「…最初から、分かっていたのか?」

「いや。私がもっと早くに気づいていれば、ここまで犠牲者を出さずに済んだ。…でも、ギリギリまでどうしても、あの子を疑えなかった」

最初からアリシアの手のひらの上で転がされていたことに気づきましたが、君彦はあの五人目の被害者の母親へのアリシアの言葉も全て嘘になるのか疑問に思います。

「いや、本物だったと思うよ。あの女性は、確かにアリシアの言葉に救われた。まるで本物の娘に言われてるみたいだって、そう言ってたでしょ」

君彦は全身に鳥肌が立ち、嗚咽をこらえることが出来ませんでした。

アリシアの左胸にはあの母親の娘の心臓が入っていたということだからです。

そして二人はアリシアを探そうとします。が、そこにアリシアが自ら現れ、悲しげな笑みを浮かべていました。

アリシアは新しい心臓を探して、夜更けに仲間であるはずの孤児の心臓を狙っていたようです。

「あたしの中には、もう一人のあたしがいるみたいなんだ」

アリシアは多重人格であることを君彦たちに話します。本来は『裏』であった意識がアリシアであり、その為記憶がないようでした。今回の場合、ヘルという主人格が存在し、先の戦闘で大きなダメージを負ったヘルは意識が弱まり、代わりにアリシアという人格が表に出て来たとのことです。

「だからずっと言ってたでしょ?本当のあたしは十七歳なんだから」

「…そうだったな。信じてやれなくて、悪かった」

アリシアは泣きながら君彦に言います。

「ごめんね、君塚。やっぱり私は悪い子のままだったみたい。悪魔探しなんて、わざわざそんなことする必要なかったんだね。だって、悪魔は最初からわたしの中にいたんだから」

その瞬間、アリシアのつけていた指輪が音を立てて割れます!そしてシエスタが「助手!」と言い、君彦を突き飛ばします!

慌てて顔を上げると、まさに刃物を振り下ろしたアリシアの左手をシエスタが両腕をクロスにして防いでいました。アリシアの瞳には色がなく、まさにトランス状態となっています。

そしてシエスタはアリシアに向けて銃を突きつけますが、君彦がそれを止めます。

「やめろシエスタ」

「…っ!バカか、君は!今、ここでやらないと」

するとここでどこからか声が聞こえてきます!

「おや、仲間割れですか」

視線を彷徨わせるもそこには誰もいません。しかし君彦たちはそれによく似た状況を数週間前にも経験していました。

「…っ、カメレオン!」

「いやぁ随分探しましたよ。少し目を離した隙に私の元を離れたと思ったら、姿を変えていただけでなく、記憶までなくしてるとは」

ヘルはあの戦闘後、正体を隠すためにケルベロスの能力を使ってこの姿になりましたが、心身のダメージが大きくアリシアの人格が出てしまい、ロンドンの街中を彷徨っていたようです。

そしてアリシアの身体はふと消え、カメレオンが連れていきました。

「ここから七百海里ほど北西に向かった海域に、我々が拠点にしている孤島があります。どうです、そろそろ頃合いでしょう?そちらも準備が整い次第、我々の元においでになるというのは」

カメレオンはあくまで作ったような丁寧口調でシエスタと君彦に宣戦布告します。

そして最後に「ではお待ちしています」とだけ言い残し、本当の意味で去っていきました。

残された二人は長い沈黙の後、「…これから、どうする?」とシエスタに君彦が訊きます。シエスタは情けない泣き言をいう君彦に

「仲間を助けに、旅に出よう」

君彦は迷わずに、その手を取ります!

過去~とあう海域へ~

あの教会での出来事から5日後、君彦たちは《SPES》が支配しているとある海域の島へと向かっていました!そして今回はシエスタと君彦の他にシャルも一緒に行動することとなります。

具体的な作戦としては、シエスタは別行動をとり、君彦とシャルの二人で実験施設へと向かうとのことになりました。シャルは「マームの方についていきたいです」というが止められます。

「そろそろみたいだね」

シエスタは、目を細めて海の向こうを見つめます。

ほどなくして島の港に辿り着いた君彦たちは、荷物を降ろし上陸を果たします。そしてシエスタは二人と別れ最後のミッションへと身を投じます!

シエスタと別れた後、君彦とシャルは二人乗りでバイクにまたがり目的とへと向かいます!

「ていうか、逆じゃない?」

バイクの運転をするのはもちろんシャルであり、君彦は後ろに乗ることとなっていました。

「いや、俺免許持ってないし」

「だっさ」

二人はバイクで向かう中、そんなことを話していると、

「マームに抱き締めてもらっとけばよかったのに」

シャルはスピードを緩めることなく君彦に言います。君彦は「そんな情けない真似できるか」と言いますが、シャルは「アナタにはマームしかいないんだから」と言います。

「シエスタには、俺しかいないわけじゃないからな。俺だけ特別なんてことは…」

「いないよ。マームには、アナタしかいない」

君彦はどう返したらいいか分からずそのまま目的地まで向かいます。

過去~SPESの黒幕と目的~

やがて到着した研究所の中は薄暗く、君彦たちは慎重に進むことにします。奥に進むとエレベーターを発見し、二人は地下へと降りていきます。そして降りた先で見た光景は――

一面の血の海でした!

目も覆いたくなるような損傷の激しい遺体が転がり、こういう場に慣れているはずのシャルでさえ思わず口を押えます。そんな遺体の山の上に君臨するように、一人の男が佇んでいました!

「お前は、ケルベロスか…?」

「残念ながらハズレだ。我はケルベロスでもなければ、ヘルでもない」

シャルは「じゃああなた自身は何者なの?」と言い、拳銃の銃口を男に向けます!

「親だよ」

この男はケルベロスなどの《人造人間》の産みの親であり、《SPES》の親玉でもありました!そしてその男は自分の正体を明かします!

「俺は宇宙からこの星に来た植物――《シード》、人でもなければ怪物でもない」

次の瞬間、シードの耳から触手が生えてきます。まるで《コウモリ》のような触手でした!

「っ、アナタたちの目的はなに?《SPES》は、なんのためにテロなんか起こしてるっていうの?」

「生き残るためだ」

そしてシードは自分の耳から生えた触手で自らの腕を切断し言います。

「俺たちはこの惑星を《種》で埋め尽くす」

シードの腕は傷口が瞬く間に再生され、切断された腕も新しく肉体が再構築され始めました!

「…っ、それが、罪のない人間を殺して言い動機になるとでも思っているのか?」

「種の拡大の邪魔となる、外来種である人間を排除することになんの問題がある?」

「っ、外来種はお前たちの方だろ!」

君彦は思わずシードに向けて銃を発砲します!しかしさっき切断された腕から産まれた、泥人形のような《人造人間》がシードの盾となり崩れ落ちます。

「心は、痛まないのか?」

「これも種の存続のために必要な犠牲だ。案ずるな、これらの種は決して無駄になっていない」

そういうとシードは倒れたばかりのクローンから、小さな漆黒の石を拾い上げます。

「《種》?その石のことか?」

「そうだ。そして既に亡骸となった同胞たちの《種》の一部は、今あれに受け継がれている」

「……っ!ヘル、か…」

ヘルがここにいないということは、シエスタの元にヘルガいるということを知り、君彦は急いでシエスタの元へ行こうとしますが、その時!

「そう簡単に逃げられるとでもお思いで?」

聞き覚えのある不快な声が聞こえてきます!

「カメレオン…ッ!」

「はは、こっちでもまた楽しめそうですね」

こっちでも?まさか!

不安のなる君彦にシャルは「キミヅカ!」と呼び、銃を虚空に構えつつ視線で合図を送ります。

「ワタシがここを食い止める。だから早く――」

「ですから、無視されると困るのですが」

カメレオンの声が移動するようにあちこちから聞こえてきます。これではいつ攻撃が飛んでくるか分からないと思ったところに――

「親の話を遮ったな?」

ふいにシードの姿が消え、「っがあああああああ!」というカメレオンの悲鳴が聞こえてきます。そして次第に姿が現れ、カメレオンの首が、シードの右腕によって鷲掴みにされ宙に浮かされていました。

「貴様はアレの護衛として生かしてるに過ぎない――図に乗るな」

そう吐き捨てるとシードは、首を鷲掴みにしたカメレオンをそのまま床に叩きつけます!

「シード、なぜ俺たちにあそこまで《SPES》の情報を与えた?」

「どちらか一方に肩入れしては、計画が成り立たなくなるからな」

そんな意図も読めない発言を吐いたシードは、ふっと姿を消してしまいます。

「カメレオンの能力も当然使えるのか…」

「キミヅカ、今のうちに」

しかし倒れたカメレオンが立ち上がり、再び姿をくらませます。シャルは君彦にバイクの鍵を渡しこの場を任せるように言います!

「いつか、後ろに乗せなさい」

「…ああ、練習しとく」

そして君彦はシャルのバイクでシエスタの元へと向かいます!

過去~もう一度君と会えたら~

シャルのバイクを借りた君彦は、シエスタの元へとアクセルを全開で回して向かいます!

君彦はカメレオンが言った言葉である『はは、こっちでもまた楽しめそうですね』の言葉が引っかかっていましたが、シエスタがカメレオン程度に負けるわけもないとも思っていました。ただ悪い予感がしており、君彦は二時間ぶりにシエスタの元へとたどり着きます!

「…っ!シエスタ!」
そこにいたのは地面にうつぶせで倒れこんでいたシエスタの姿でした!
「お前、冗談じゃねぇぞ!俺に黙って死んだりしないって約束だろ!なぁ……っ!」
君彦は心臓が止まっているシエスタを見て、人工呼吸をしようとしたその時――
「君がここに来るのは想定してなかったんだけどな」
ぱっちりと空いた眼でシエスタは君彦を見ます!君彦は腰が抜けるかと思うぐらいびっくりします。どうやらシエスタは自ら心臓を止め仮死状態となり、死んだフリをしていたようです。
「どんな身体だよ、まったく」
君彦は安心のあまり、地面に尻もちをつきます。それを見たシエスタは「もしかして、ホッとして腰が抜けた?」と君彦をからかいます。
「ふふ、君をからかうのは本当に楽しいーー楽しかった」
すると二人の後ろから一人の少女が現れます!

過去~再戦~

振り返った先の少女は、紅い瞳に紅い軍服。そして幾本のサーベルを持ったヘルでした!

「治療はもう済んだとみなしていいんだね――仲間の命を使って」

「仲間?仲間って、誰のこと?」

ヘルは紅い瞳で冷たく見下しながら言います。そしてアリシアの話になるとヘルは――

「ボクは、キミたちみたいなお仲間ごっこなんて興味がない」

そして次の瞬間、地面から幾本もの、いばらのような棘のついたツルが生えてきました!

「敵もバカじゃなかったってことだよ――きっとこの島の地層には、奴らの《種》が植えられている」

「なるほど、島全体が俺たちの敵ってわけか」

そうしてヘルとシエスタの再戦が始まります!

地面から伸びるいばらがシエスタに襲い掛かると、シエスタは銃でそれらを的確に撃ち落とし――その隙をついてヘルがサーベルを構えて飛び掛かりますが、シエスタはマスケット銃を剣のように振るい撃ち合います!君彦は援護射撃しようとしますが、圧倒的な戦闘の前に何も出来ませんでした。

「あーあ。笑えるほど必死だね。そんなにご主人様のことを取り返したいんだ」

「まさか、アリシアの身体を、お前が乗っ取ったのか?」

「乗っ取ったんじゃない。代わってあげたんだよ」

ヘルの身体は少し特別で、元は人間だったようです。コウモリのように《SPES》によって人間に実験を重ねて産まれた《人造人間》だそうです。

ヘルは実験に耐えられなかったご主人様の苦痛をによって生まれた人格でした。

「ああ、やっぱり嘘だったんだ」

それを聞いたシエスタはヘルのことを見抜きます!そして上空から一台のヘリが飛んできて除草剤を巻き始めます!乗っているのはおそらく風靡さんであり、ここに来る前に既にシエスタは準備していたようです。

「何が?ボクの何が嘘だって?」

ヘルは単身でシエスタに切り込みますが、その手は震えていました!

「君はアリシアの防衛本能によって生み出されたまったく新しい存在――であるなら、君自身に《SPES》としての本能が根付いてるはずがない」

ここでヘルは初めて動揺します!そして顔を上げたヘルの顔は怒りに染まっており――

「何のためにボクがそんなことをする!ボクがそこまで《SPES》に尽くす理由は……!」

「愛されたかったんでしょ?お父さんに」

過去~怪物が啼く~

核心に触れられたヘルは激怒し、シエスタに襲い掛かります。

「君はアリシアに嫉妬した。自分を苦しめるだけ苦しめて、そのくせ私や助手という仲間を作ったアリシアが憎くて、憎くて……そして羨ましかった」

「違う……違う…違う!」

そしてヘルの紅い目が光ります!

「キミは今ここで自害する…!」

刹那、シエスタは腰のホルスターから銃を取り出して自らのこめかみに突き付けます!ヘルの能力が発動しシエスタは自害しようとしますが――

「シエスタ、お前は死なない」

君彦の声でシエスタはすぐに銃を離します!

「な、んで……」

「簡単なことだよ。私は誰よりも――自分よりも、助手のことを信じてるから。たとえこの意識が自らの死を自覚しようとも、彼がそれを確かな言葉で打ち消してくれるのなら、私は迷わずそれを信じる。ただ、それだけの話よ」

3年間共に過ごしてきた二人は、互いが自分よりも信頼し合えるパートナーとなっており、それこそが《紅い眼》による洗脳を打ち破る唯一の方法でした!

「っ!絆?そんなもの、そんなもの……っ!」

ヘルは認められず、その場に剣を落とし、頭を抱えます。そんなヘルに君彦が語り掛けます!

「お前は《聖典》なんかに従わなくていい。人をこれ以上殺さなくていい。そんなことしなくても仲間は出来る。絆は、生まれる」

そして無理にシードの言うことを聞く必要なんてないと言いますが、ヘルは落としていた剣を拾い上げ、その瞳は燃えるような赤色を灯していました。

「ボクは愛されたかった。必要とされたかった。生まれた意味を認めてほしかった。……だけどそれは誰でもいいわけじゃない。誰でもいいから仲間が欲しかったわけじゃない。ボクはただ、お父さんに愛されたかった。お父様に認めてもらいたかった」

そして剣の切っ先をシエスタに向け――

「だからボクはその為だけに生きて戦う、世界を壊す――それがボクの生存本能だ」

それは決して折れることのない、信念にも等しい巨悪と呼ぶべき何かでした!

シエスタはそんなヘルに長銃を構えその戦線布告を受け入れます!

「《植物》は枯らした。《紅い眼》も封じた。君に残ったのはその刀一本。そろそろ決着をつけようか」

そして二人は体制を低く構え、ヘルがシエスタに切りかかろうとしたその時――

唐突に地面が割れ初め、シエスタと君彦の間に亀裂が入り、そこからなにかが現れます!

現れた者は、どこかで見たグロテスクな色味をした爬虫類であり、全長十メートルを超えようとするほど巨大な存在である――復活した《ペテルギウス》でした!

過去~世界で一番大切な君へ~

復活したペテルギウスは、腹が減っているかのように暴れまわります!ペテルギウスには知能がなくただ目の前の心臓をめがけて土煙をあげながらシエスタとヘルに襲い掛かります。

やがて土煙が晴れた先に映ったのは――あれだけ暴れていた巨体のペテルギウスを横たわらせている姿とその怪物に足をかけているヘルの姿、そして左胸から血を垂れ流しているシエスタの姿でした。

君彦は気づかぬうちにシエスタの下へと向かいましたが、ヘルの「ああ、キミは少し動かないでほしい」との言霊を投げかけられ、君彦の足が止まります!

そしてヘルはシエスタの下へと行き、シエスタの心臓に手を出そうとします!

「やめろ!心臓が欲しいのなら俺のをくれてやる!だからそいつだけは……シエスタだけは…!」

必死でヘルを止めよう君彦ですが、シエスタが倒れている中、君彦は動けない足の洗脳を解くことが出来ませんでした。

「言ったはずだよ。キミはいずれボクのパートナーとなる。だから、命は大切にしなくちゃ…ね?」

そういってヘルは自らの右腕をシエスタの左胸に突き刺します!

「メイタンテイの心臓はボクが貰う。これでボクは、唯一無二の存在になる」

ヘルはシエスタの身体から心臓を引き抜いて取り出します!

呆然と見ることしかできない君彦の目の前で、ヘルは自分の心臓とシエスタの心臓を入れ替えます。心臓は最初からそこに収まるべきものだったかのように、すっとヘルの身体へと飲み込まれていきます!

「やっとこの身体に相応しい格の心臓が手に入った。きっとこれでお父様に…。」

ヘルが満足に呟いている間、ヘルの洗脳が解けた君彦は虚無感の中、シエスタの亡骸の元へと向かいます。膝を折り、血に染まった遺体を抱きかかえ、開いたままの瞳を手のひらで閉じ白い顔に飛び散った血を指で拭きます。

シエスタは明らかに死んでいました。

悲しみの中君彦は泣きながら「…すまない」と震える手で、腕の中のシエスタの頭を撫でます。そして君彦はヘルに向かって――

「返せよ」

ヘルは振り返り、一体何を返すのか分からず首をかしげます。

「その心臓は、シエスタのものだ。返してもらう」

「それは無理な相談だね。これはもう、ボクのものだ」

その瞬間君彦の中で何かがはじけ、気づけば足が動いていました!ヘルを許せなかった君彦はナイフを抜き、ヘルの懐へと飛び込みます!!

「…仕方ないね。キミの拳はボクに届かない

ヘルの紅い眼が光り、再び君彦の身体は動かなくなります。

「その怒りはどこから湧く?さっきキミが…キミたちが言っていた、絆が理由?キミは彼女の、一体何だったの?」

ここで君彦は自分にとってシエスタはどんな存在だったのかを今一度考えます。3年間の出来事を思い出し、シエスタと共に過ごしたつらい経験や楽しかった経験、時には喧嘩したりもした経験などを思い出します。

「俺とシエスタが一体どういう関係だったかって?俺がシエスタをどんな風に思っていたかだって?」

全身に力が入り、君彦は自らの力でヘルの洗脳を解きます!そして君彦はもう二度と届かない相棒への想いを叫びます。

「世界で一番大切に思ってるに決まってるだろ!」

そして君彦の拳がヘルへと迫り、顔面を目前に捉えたその寸前に――!

「愛の告白は非常にありがたいけど、その愛する人間の顔に傷をつけるつもり?」

そんなどこか懐かしい皮肉が聞こえてきます。

過去~もう一度君に会いに行く~

君彦は先ほどの声がどこから聞こえてきたのか分からないでいました。それはヘルも同じで二人して首をかしげます。

するとヘルが持っていたサーベルを落とし、そんな動作をする自分の行動をヘルは驚きの表情で見つめています。そして次の瞬間、ヘルの瞳が赤から青へと変わります。

「シエスタ、お前なのか?」

驚愕するヘルの左半分の顔面。そしてもう半分はじっと君彦を見据えていました。

「許、さない…勝手に、ボクの身体を…乗っ取るなんて、真似は…」

「黙りなさい。今は、私が彼と喋っている」

ヘルという仇敵の身体を借りてはいるが、シエスタはヘルの中で生きていました!

「助手、時間がないからよく聞いて」

シエスタは再開の喜びに浸るわけでもなく、君彦に話を続けます。

「実は、私の心臓はちょっと特別製でね?たとえば私は、自分の意識をこの心臓に宿すことで、こうして他人の身体の中で自我を保ち続けることが出来る」

シエスタは記憶転移という現象に近いことを行っていたようで、シエスタの記憶や意識もヘルに半ば移植された形となりました。

「…!シエスタ、じゃあお前は!」

「うん、こうするしかなかった。私がヘルの中に侵入して彼女の意識を押さえ込む。それがたった一つ、ヘルに対抗できる手段だった」

シエスタは最初から死ぬつもりで作戦に当たっていました!君彦はそんなシエスタに一言声をかけてほしかったようですが、声をかけると君彦に止められると思い、話さなかったようです。そしてシエスタはヘルの姿で寂しげに笑い――

「私はこの身体に入り込んで、ヘルの凶悪な意識を押えてみせる。そうしたらきっと、この身体にはもう一度、アリシアの人格が目覚めるはずなんだ」

「…!アリシアが!?」

「もしかすると彼女はまた記憶を失ってるかもしれない。それでも彼女に協力を仰いで――そしていつか《SPES》を倒してほしい」

「っ!だけどそんなことしたらお前はどうなる?アリシアの人格が目覚めるということは、お前の意識はヘルと共に消えるってころだろ!許さねぇ…許さねぇからな、そんなことは!」

シエスタはまた儚げに笑い、「君は、そういうと思った」と言います。君彦は納得できませんでしたが、その時足元が大きくふらつきます。

君彦は何か甘い香りを感じ、頭がぼーっとする感覚に襲われ、その霞む視界の先には《ペテルギウス》の亡骸から、大きな花が咲いているのを見かけました。

それは花粉であり、以前君彦たちが遭遇した《トイレの花子さん事件》にて使われていたクスリの正体そのものでした!

この花粉を摂取した者は真っ先に襲われる副作用があり、それは記憶障害です。

「嫌だ…忘れたく、ない…」

君彦はこの3年間の記憶やシエスタのことを忘れてしまわないか不安に思います。

「大丈夫だよ。まぁもしかしたら少しぐらいは忘れちゃうかもしれないけどね…たとえば今ここで起きた出来事とか、私が話した内容とか」

それでも、と彼女は微笑を湛えて続けます。

「君は私を忘れない。決して使命を投げ出さない。『理不尽だ』ってため息をつきながら、アリシアと一緒に仕事を続けてくれる」

「そんなの、ダメだ…断る……俺は、お前の助手なんだ…他の…やつの、相棒になんて、ならない……」

「…はは。最後に嬉しいことを言ってくれるね」

君彦は朦朧とした意識の中で最後シエスタの顔を見ます。そしてシエスタは泣きながら君彦の両肩を掴んで叫びます!

――いい?

――私は君を忘れない!

――たとえ意識を凶悪な敵に奪われても、君のことだけは忘れない!

――もしかすると、時間はかかるかもしれない!

――一週間か、一か月か、一年か!

――長い時間はかかるかもしれない!

――それでも必ず!

――もう一度この身体は君に会いに行く!

――絶対に、絶対に!

そこまで訊き遂げて、君彦の身体は完全に地面に倒れます。最後に見たシエスタの顔は、涙で濡れた笑顔でした。

過去~意識が消えるまで~

シエスタは自分の意識が完全に消えるまでのわずかな時間。膝の上で眠る助手の頭を撫でていました。

「バカか君は。…だからあの船でお別れしたつもりだったのに」

そしてシエスタは一人でしゃべり続けます。

「倒すだけならできた。殺すだけなら簡単だった。でも彼女は――アリシアは言った」

アリシアは生きたいと、学校に行きたいと、シエスタはこの身体で目覚めたアリシアに願いをかなえてもらいたかったようです。

「依頼人の利益を守ることが、探偵の仕事だから」

今回の件に関しては全てシエスタは事前に準備しており、この後は既に話を通していた風靡さんの手によって回収される手はずとなっています。

「死にたく、なかったな」

シエスタは君彦と過ごした3年間を思い出します。自分にとって助手は大切な存在だったと感じていましたが、その役目は今後代わりに、この身体が果たしてくれると信じて――

「そうだ、名前も考えないとね」

シエスタはヘルを封印するための最後の呪いとして、新しい名前をこの身体につけ生まれ変わらせようとします!

アリシアのあの、夏の太陽のように眩しい笑顔にふさわしい名を――

「ねぇ、助手。覚えておいて、いつか君の眠りを覚ます者の名前は――渚。夏凪渚

続き➡【探偵はもう死んでいる】3巻ネタバレ・感想前編!

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【探偵はもう死んでいる】原作2巻を読んで見た感想!

以上「探偵はもう、死んでいる」2巻のネタバレ後編でした!

シエスタとの過去がメインだった巻でしたね!特にシエスタの魅力がたっぷりと描かれていた2巻は非常に満足の出来る内容でした!また衝撃の事実として一番はヘルと夏凪は同じ存在ということが驚きましたね!そしてシエスタの死の真相も……最後は感動しました!

でもまだシエスタの心臓の謎であったり、新しく出てきたシードの謎なんかもあるので、今後どうなっていくのか楽しみです!

今後のネタバレが知りたい方は【探偵はもう死んでいる】3巻ネタバレ・感想前編!をご覧ください!

「探偵はもう、死んでいる。」のまとめページはコチラ

【探偵はもう死んでいる】キャラクターまとめ

主人公サイド

君塚君彦

シエスタ

夏凪渚

斎川唯

シャーロット・有坂・アンダーソン

SPES

シード

ヘル

コウモリ 

調律者

シエスタ

加瀬風靡

スカーレット

スティーブン・ブルーフィールド

リローデット

ミア・ウィットロック

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