「たんもし」こと「探偵はもう、死んでいる。」の原作3巻のネタバレ・感想をしていきます!
前半では、夏凪の過去が分かったり、ヘルの本当の目的なんかも分かりましたね!また新たなキャラとして吸血鬼も登場しました!コウモリのこともあるので一体どうなるのでしょうか⁉
今記事は原作3巻のネタバレ・感想の 後半の記事です。
3巻前半➡【探偵はもう死んでいる】3巻のネタバレ・感想前編!
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【探偵はもう死んでいる】3巻ネタバレ・感想、後編
では「探偵はもう、死んでいる。」の原作3巻の内容をネタバレしていきます!
今記事は原作3巻の後半記事です!
前半記事はコチラ➡3巻のネタバレ・感想前編!
《吸血鬼》スカーレット
斎川を待つ君彦でしたが、その間に後ろから吸血鬼に血を吸われ倒れてしまいました。
「目が覚めたか、人間」
君彦は目を覚まし、辺りを見渡すとテレビ局の屋上らしき所にいました。吸血鬼は屋上の細い柵の上で器用に片膝を立てて座っています。
「なぁ、吸血鬼。一体、お前は…」
「スカーレット。過去、現在、未来永劫。すべての夜を束ね、下等な愚民を支配する――オレの名だ」
吸血鬼は自分の名を名乗ります。
君彦はスカーレットとの実力の差を相対して改めて身に染みて感じさせられます。吸血鬼と人間。生物としての核の差が違うと…
「心配せずとも貴様の血はもう吸わん。そもそもオレは、美しいものにしか興味はない」
スカーレットが君彦の血を吸ったのは、二週間ほど食事をとることを忘れており、急場を凌ぐため仕方なく君彦の血を吸っったようです。
「…スカーレット、お前は《調律者》なんだよな?」
「ほお」
君彦はスカーレットの正体は、あらゆる危機から世界を守るために任命された《調律者》である予想します。スカーレットは少し驚いたようで、「白昼夢は貴様にそのことを語ったことはないと踏んでいたが」と言います。
どうやらスカーレットとシエスタは知り合いのようで、それを聞いた君彦はスカーレットとシエスタの関係を探ります!
「は、安心しろ。オレとあの女の関係は、貴様が邪推するようなものではない」
ただ《名探偵》のシエスタ、《吸血鬼》のスカーレット、この二人は浅はかならぬ因縁があることは確かなようでした。
「じゃあ尚更、なぜ俺の下へ来た?」
「色々と理由はあるが…まずは一つ、依頼があってな」
スカーレットは基本的に契約によって動いており、ある契約によって君彦の前に現れたようです。スカーレットの契約者とは――
「ハハッ、また会ったな。ワトソン」
後ろから声が聞こえ、やってきたのはコウモリでした!!そしてコウモリの耳からはやした触手の中には斎川が苦しげな顔を覗かせています。
コウモリの契約
「君塚、さん…」
苦しげな表情で斎川は君彦に助けを求めます。
「斎川を返せ、コウモリ」
「ハハッ、物騒なプロデューサーだなあ」
そう言うとコウモリは予想に反して、斎川を触手から解放します。そして君彦と斎川は改めてスカーレットとコウモリの前に並びます。
「コウモリ、なぜお前がスカーレットと一緒に居る?シードと手を組んだはずじゃないのか?」
スカーレットは「説明は任せる」と言い、影の中に入るように消えていきます。そしてコウモリは今回の件について説明します。
元々はシードがコウモリを連れ戻すべくスカーレットに依頼を出したようです。《SPES》も人手に困っていたようでシードは一度袂を分かったコウモリに接触してきました。しかしコウモリは《SPES》に戻るつもりはなく、反対にとある理由で利害が一致したスカーレットと協力関係となりました。
「オレはただ勧誘しに来ただけだ――仲間にならないか、とな」
「「は?」」
驚く二人にコウモリは話を続けます。
「シードが…《SPES》がなぜこの一年間、目立った動きを見せなかったか。お前は考えたことがあるか」
コウモリ曰く、シードは惑星の外から《種》として飛来してきましたが、この地球の環境には馴染めずにいました。それゆえシードは地球上で生存を可能にするために人間の器を探しています。ただどんな肉体でもいいわけではなく、最低条件として《種》に適合できる身体でなければいけませんでした。
夏凪が通っていた施設はシードが適合する器を探すために作られたものでした。だが思った以上に実験は上手くいかず、シエスタがヘルを押さえ込んだことでさらに器の存在がいなくなりました。
そしてシードはこの1年間、スカーレットを通じて新たな人物を探していました。《種》を宿し、かつ大きな副作用も現れていない人物。
「シードは、斎川唯を器にするつもりなんだな」
語られる真実
シードは自らの器として斎川唯を狙っていることが分かりました。コウモリは改めて斎川を《SPES》討伐の一員として迎え入れるようとします。
「それにその娘自身、《SPES》と戦う理由は誰よりもあるはずだ」
コウモリは斎川の《左眼》がどのような経緯で埋められたのかを話します。
斎川の左眼は生まれてすぐ癌が見つかり、その病気は完全に感知することは出来ませんでした、そこで斎川の両親はどんな手を使ってでも娘の病気を治そうとし、《SPES》に頼ります!巨額の資金を《SPES》に投資します。
そこまで聞き斎川はある疑問をコウモリにぶつけます。
「とある契約を交わして《SPES》の秘密を知った一般人がいたとして、だけどいずれその契約が満了を迎えた時、《SPES》はその一般人をどうしますか?」
「間違いなく殺すだろうな」
斎川の両親は事故ではなく、《SPES》によって殺されていました。
「だから斎川唯には戦う理由がある。《SPES》に銃口を向ける宿命がある」
コウモリは斎川に向けて銃を放り投げますが、斎川はこの事実を知り、崩れ落ちます。するとここでコウモリの近くの陰から再びスカーレットが出てきます。
「よくもそのような交渉の仕方で説得が出来ると思ったな、哺乳類」
コウモリに向かってスカーレットは「貴様は下がっておれ」と言い、コウモリの前に出ます。
「ハッ、吸血鬼。勘違いするな、たしかにオレはお前の強力は仰いだが、だからといって手下になった覚えは…」
「図に乗るなよ――下等生物」
その瞬間、スカーレットの目が雷光のように輝き、コウモリはその意志に反したかのように、スカーレットに向かって頭を下げ始めます。
これも吸血鬼の力なのか、スカーレットは手も触れずにコウモリを制圧し、改めて斎川と君彦の前に向き直ります。
「どうだ、サファイアの娘。貴様がこやつの要求を呑み、《SPES》討伐に手を貸すのなら、一つ願いを叶えてやろう」
そして吸血鬼は、甘く囁きます。
「貴様の両親を生き返らせる、というのはどうだ?」
斎川の選択
「あり得ない。一度死んだ人間は、決して生き返らない」
君彦は斎川には悪いと思いつつ、スカーレットの言った言葉を否定します。
「ああそうだな。しかし俺は吸血鬼――不死の王であるぞ?」
次の瞬間、スカーレットは「舞い戻れ、爬虫類」と言い、スカーレットの影から人型のシルエットが浮かび上がります。
目の前に映ったのは、アジア系の顔立ちに、銀色の髪の毛、そして爬虫類のような長い舌が生えていました。
「カメレオン…」
スカーレットが呼び出したのは紛れもないカメレオンの姿でした!!しかしカメレオンはダラっとした姿勢で「――ア、ア、アア、アアアア」と叫びます。
「有り体に言えば、ゾンビとでも呼ぶべき存在だろうな」
スカーレットの流れる血は、こうして死んだものを蘇らせることが出来ます。だがしかしそれは死体人形のようでコミュニケーションも取れず生ける屍のような存在でした。
「オレの吸血行為によって作られる《不死者》は、生前の最も強い本能を残して生き返る。すなわち、こやつらは生前の願いを兼ねることができるのだ」
スカーレットは死んだ人間が願いをかなえることができるのは素晴らしいことではないかと言いますが、君彦たちは価値観が違うその行為を否定します。
「話が違うぞ、吸血鬼」
ここで背後にいたコウモリが動きます!
コウモリはここまで不完全な不死者しか作れないということは知らず、完全な形で死者を生き返らせることができると思っていたようです。
「たわけ!代償なき奇跡などあるものか。なにかを得れればなにかを失う、当然の理であろう。それともなにか?髪の毛一本で貴様の妹御が元通り生き返るとでも本気で思っていたのか?」
「…っ!黙れ!」
コウモリは激昂し、触手で蘇ったカメレオンを締め上げます!スカーレットは斎川の前に立ち、「さぁ、サファイアの娘。貴様が決めろ」と斎川に選択権を委ねます!
「可哀そうに」
斎川は復活したカメレオンを見て、そして死者はもう何も語ってくれないと言い、両親もそんな一人娘にどんな生き方をしてほしいのかを聞くことも出来ません。そして斎川は両親が生きていたらいつだって褒められるような自分でいたいと言い、スカーレットの選択を否定します。
「だから、ごめんなさい。これも、あなたがきっと望んでくれると信じて」
斎川の右手には、見えないはずのマイクが見え、カメレオンに――あるいは両親に捧げる鎮魂歌を捧げます。
「それじゃあ聞いてください。曲は――」
斎川は吸血鬼も人造人間も無視して歌います。
「はは、はははっ」
スカーレットは額に手をかざし、さぞ可笑しそうに笑います。
「なんだあの娘は、もはやオレの姿など目にも入っておらんかったではないか」
斎川は歌を終えると、着替えるために楽屋へと帰っていきました。
「ところでスカーレット、お前はどうしてシードではなくコウモリに協力した?」
「所詮は気まぐれ…と言ってもよいが」、スカーレットはどこか含みを持たせながら言います。
「一度、《特異点》を見極めておこうと思ってな」
そんな謎の言葉を言い、君彦のことを見つめます。そしてスカーレットは去っていきました。
シャルの意志
君塚と斎川はやっとの思いで《シエスタ》の隠れ家に帰ってきます。
しかしまたもやトラブルは続きました!
帰ると二人の前には、夏凪が倒れている姿がありました!ぎりぎり意識はあるようで夏凪は二人に「逃げ、て…」とだけ伝えます。
次の瞬間、君彦の後ろからさっきが伝わってきました!
「おいおい、いつもと随分雰囲気が違うな――シャーロット・有坂・アンダーソン」
シャルは君塚達を獲物を狩るような目で見ます!そして君彦は斎川と夏凪に「逃げろ!」と伝えます。
「無駄よ。たとえ地の果てまで追ってでもワタシは――サイカワユイを殺す」
シャルは斎川を狙っているようで、殲滅すべき対象と見ています!
「ついさっき、そういう命令が下った。だからそうするだけ。ほかに理由なんてないわ」
斎川を狙うシャルを君彦は止めようとしますが、シャルの本気のスピードについていけませんでした。そしてシャルが君彦との間合いを詰めたその瞬間――
「やはりあの時、血を吸ってやっていて正解だったな」
再び、スカーレットが現れます!
思わぬ邪魔が入ったシャルは戸惑います!
スカーレットは助けに来たわけではなく、コウモリとの契約が破棄になったことで受け取るはずだった対価を君彦に渡すようコウモリから頼まれて来たようです。それは太陽の下でも歩けるようになる石でした!
それをスカーレットは君彦に渡し、去って行こうとしますが――
「なぁ、吸血鬼。その二人を連れて逃げてくれないか」
「それは、正式な契約か?で、あるならば――」
「対価は、俺の血だ」
スカーレットは「なるほどな」と言い、君彦の願いを受け入れ、二人を背負い去っていきます!
そして残ったのは君彦とシャルの二人だけとなります!
「誰だ?せめてそれぐらいは言ってもらう。なぁ、シャル。お前が上からの命令に絶対に従うエージェントだというなら、聞かせてくれ。そんなふざけた作戦を思いついた、お前の上司は誰だ?」
「アタシだ」
君彦の激昂を沈めるような冷たい声が響き渡ります。その声の持ち主はタバコを吸いながら続け、
「アタシがそいつに、斎川唯抹殺の命を下した」
タバコの煙が似合う、赤髪の刑事である加瀬風靡が立っていました!
《暗殺者》加瀬風靡
思わぬ人物に君彦は一瞬思考が止まります。
「加瀬風靡――あんたは一体、何者だ?」
「《暗殺者》だ」
隠す気もなく風靡は伝え、君彦は察します!
「あんたも《調律者》の一人だったってわけか」
「ああ、お前ももう、その言葉を知ってたか」
風靡はタバコに火を点け、ながら煙を吐き出し続けます。
「警察官ってのは仮の姿だ。アタシの《調律者》としての役職は《暗殺者》――身を隠し、世を欺き、敵を殺す。それがアタシの仕事だ」
風靡の目的はあくまで《SPES》の殲滅であり、シードを倒すための手段として斎川を殺そうとしていました!風靡はシードがスカーレットを使い、コウモリに接触を始めた以上、タイムリミットが近いと考えシャルに斎川の暗殺を下したようです。
「それで、シャーロット。あいつらは今どこにいる?」
「…空港に向かってるみたいです」
シャルは斎川に発信機を忍ばせていたようで、斎川の位置を把握していました。
「なるほど、あのお嬢様のことだからな、プライベートジェットでも使うつもりか?まぁいい、すぐに空港を閉鎖させる。いくぞ」
そうして風靡はシャルを連れてこの場を後にしようとします。しかし君彦がそれを阻止しようとしますが、風靡から「公務執行妨害だ」と額を殴られ君彦の意識はもうろうとしていきます。
そして二人は部屋を出ていき、君彦は風靡を止められなく気を失ってしまいます。
《シエスタ》の助手となる
それからしばらくして君彦が目を覚ますと、そこには《シエスタ》の姿がいました。
「情けない有様ですね。しかもこんなにわたしの家を荒らして。あとで修繕費は請求させてもらいます」
「…やれ、理不尽だ」
《シエスタ》はここに来る前に風靡とやり合っていたようで、一時撤退をしていたようです。そして君彦と《シエスタ》は今後のことについて考えます。
「《シエスタ》――俺の助手になってくれ」
「かしこまりました。ではこちらへ」
《シエスタ》はスタスタと家のどこかへと歩いていきます。そこは壁で《シエスタ》の声に反応して開く仕掛けとなっていました。
扉の先にあったのは、格納庫のような場所であり、その中には見覚えのある大型バイクがありました!
「人型戦闘兵器《シリウス》、その車両モードがこれです」
かつてシエスタがロンドンで乗っていた兵器のバイクバージョンのようです。《シエスタ》はこれに乗って風靡たちを追いかけるようでした!
二人はバイクに乗り、《シエスタ》が運転して君彦は後ろに乗り《シエスタ》の腰に手を回します。
「人の腰に掴まりながら感傷に浸るのはやめてください」
「はぁ。お前の身体、温かいな」
「過去最高に気持ち悪いです。というか君彦あなた、結構セクハラを躊躇わないですよね」
君彦は「たまにはいいだろ」と言い、《シエスタ》は「たまにもいいわけないでしょう」と、ふっと笑います。
「…なぁ、《シエスタ》。お前、もしかして――」
「さて、それじゃあ弟子へのお仕置きをしに行きますよ」
君彦は何かに気付いたようですが、《シエスタ》はアクセルを利かして風靡たちを追いかけていきます!
探偵はずっと、そこにいる
それから十分後、《シエスタ》と君彦は風靡たちを追いかけバイクで走ります。君彦は《シエスタ》がいつも装備しているマスケット銃がないことに気づきます。
「武器もなしに二人に勝てる算段はあるのか?」
「え、特にありませんけど」
《シエスタ》には特に作戦はありませんでしたが、「ただ」と君彦に告げます。
「君彦には、なにか考えがあるのでしょう?」
「まあ、な」
君彦は何かしら考えを持っていましたが《シエスタ》には伝えませんでした。
そして車線の先に一台のバイクが見えます!乗っているのは風靡とシャルです!
「なんだ、まだそのロボットは壊れてなかったか」
「ええ、死んだフリは得意ですので」
そこからは少しカーチェイスを繰り広げたが、シリウスのバイクに積んでいた誘導弾によって全員バイクから放り出されることとなりました。
「やりすぎだ…!」
「さすがはシリウスverβ、いい火力です」
そんな軽口を叩いていると、目の前に風靡とシャルが立ち塞がります。
「私がやります。君彦は下がっていてください」
《シエスタ》はマスケット銃の代わりに、レイピアのようなものでシャルの相手をします。
シャルの過去
シャルと《シエスタ》は互いに剣で打ち合います!そして《シエスタ》の剣技にシャルは否応なしに距離を取らされる形となりました。
そしてシャルは唇を噛み、《シエスタ》の体を通して昔を思い出します。
それはシャルがまだ加瀬風靡の下で働く前、とある組織からシャルは『シエスタの暗殺』を頼まれていました。シャルは命令に従いシエスタを殺そうとしましたが失敗し、失敗をしたエージェントは組織に消される運命のところ、殺そうとしたシエスタからある提案をされます。
『私は一旦ここで死んだことにするから大丈夫。』
敵なはずのシエスタはシャルに『その代わりにたまに仕事を手伝ってほしい』と言い、契約の印に青いペンダントをシャルに渡します。
そしてシエスタの弟子となったシャルですが、1年前にシエスタは命を落としてしまいます。ただシエスタはそれも分かっていたかのように、シャルを加瀬風靡の下へと送り込むよう手配していました。
「どうして手を抜くの!どうして本気にならなの!どうしてまた…まだ、ワタシを守ろうとするの!」
シャルの速い剣技を《シエスタ》は軽く受け流していました。ただあくまで《シエスタ》は防御に徹しています。
「1年前、ワタシはなにもできなかった。だから誓った…マームに代わって今度はワタシが《SPES》を倒すって。あの人の下でどんな理不尽な目に遭おうとも、必ずワタシがマームの敵を取るんだって、そう思って………なのに、どうしてワタシは、機械でしかないアナタにすら勝てないの!」
《シエスタ》は状態を逸らしながら、最低限の動きでレイピアを振るいシャルの武器を弾き飛ばします!
「…っ!だったら!」とシャルは言い、腰から引き抜いた銃で君彦を狙います!!
「勝つためならワタシは、なんだってする!」
「君彦!」
それを見た《シエスタ》は君彦とシャルの間に入り、シエスタに銃口を向けます!
ここで今まで何の役にも立ってなかった君彦は――
「シャル、お前本当に撃てるのか?」
「どういう意味?ワタシが今さら躊躇うとでも…」
「それが本物のシエスタの身体だったとしてもか?」
その意志は決して死なない
「本物のマーム……?」
君彦の声を聞いてシャルの動きが止まります。
「君彦はいつから気づいていましたか?」
「いつから、だろうな。でも、きっかけは本当になんとなくだ」
《シエスタ》は君彦に問い、「正解です」と告げます。
「シエスタ様の肉体は、1年前のヘルとの最終決戦の後、冷凍保存されていました。それは本人の意志でした。事前に交わした約束通りとある人物によって冷凍保存の処置がなされ、その後シエスタ様の膨大な知識や記憶をデータベースとして脳と脊髄に人工知能を搭載し、また人工的な心臓を埋め込むことによって《私》は誕生しました。」
君彦はただただ頷くことしかできませんでしたが、それでもシャルはシエスタの意志を継ぐために自分が《SPES》を倒そうとします!そして君彦は――
「シエスタが残した遺産は、俺、夏凪、斎川、シャーロットの四人だ。シエスタの意思を継ぐというのなら――斎川が死ぬことはあってはならない」
シャルの顔が大きく歪みます。ですがシャルの意志は強く、いつも首にぶら下げていたペンダントのチェーンを外し、それを地面で踏みつけます!
―――が、踏みつけようとする前に《シエスタ》の手が一瞬早く間に入りそれを阻止しました!
「……痛いです」
「あっ、ごめん……なさい……」
うっかり謝ってしまうシャルに《シエスタ》はペンダントを拾い、シャルの首の後ろに手を回しその首に掛けます。
「なん、で…」
「バカか、君は」
それを聞いたシャルは泣き顔を浮かべ――
「初めて、その言葉をワタシに言ってくれましたね」
そうしてシャルは《シエスタ》の胸に飛び込もうとした瞬間――
「シャーロット。だから甘いって言ってんだよ、お前は」
《シエスタ》の胸に飛び込んだのはシャルではなく、一発の銃弾でした!
その場に崩れ落ちる《シエスタ》をシャルは抱え、目の前に立っていたのは《暗殺者》――加瀬風靡の姿でした。
風靡との決戦
銃を手にした風靡、少し離れた場所から冷たい目で君彦たちを見下ろします。
「シャーロット、お前はもう少し懸命なやつだと思っていたが…そこのガキと同類だったみたいだな」
「……ッ!」
シャルは風靡を睨みますが、すぐに《シエスタ》へと目を移します!
《シエスタ》は無事なようで、この程度のダメージなら緊急停止措置でなんとかなるとのことです。そしてそういった《シエスタ》はあとは任せるよう君彦たちに頼みます。
本来であれば絶対に手を組まない二人でしたが、風靡に立ち向かうため君彦とシャルは協力するとことにします!
「まずは敵を挟みこむぞ!シャルは右から頼む!」
「ええ!」
二人は左右に分かれ風靡を挟み撃ちにします!しかし目の前に風靡の姿はなく――
「ああああああああ……!」
君彦は何をされたのかすら分からないまま地面を数メートル転がりまわります。
「どうする?もうお前一人だぞ」
風靡はシャルに語りかけますが、シャルは臆することなく銃を風靡に向けます!そして風靡はそんなシャルにシエスタが死んだ本当の理由を告げます。
「元々シードは、自身の《種》を宿しその力を使いこなす人間こそを、器候補として考えていた。だがその考えは、あの名探偵の奇策によって封じられた。あいつは、あえて自らの命を捨てることで器としての権利を消滅させたんだ」
シエスタが死んだ理由はヘルを押さえ込む為だけではなく、シエスタが死んでヘルを押えることによってシエスタとヘルがシードの器候補であったのを阻止したのです。
「お前たち四人が最後に残した遺産なのだと。その意味は分かるか?――お前たちも私の意志を継いで世界のために死ね、ということだ」
そして風靡はシャルをもう一度こちらにつかせるよう聞きますが、シャルは青いペンダントを握りしめ、こう叫びます!
「ワタシは、シエスタという一人の美しくて強い女性に憧れていたんだ!」
シャルは再び風靡にサーベルを向けて風靡に斬りかかりますが、簡単に躱され風靡は腰から銃を引き抜きシャルの額に銃口を向けます!
「遊びは終わりだ」
シャルは素直に負けを認めようとした瞬間――
「右に九ミリ、下に七ミリ修正です――今です、渚さん」
上空から、響くような音と一発の銃弾が放たれます!その銃弾は風靡の持っていた銃を弾き飛ばした!
「……わざわざ自ら戻ってくるとはな」
上空には小型の戦闘機の中で、マスケット銃を構えている夏凪と斎川がいました!
最後に出した答え
「小型ボートに続いて戦闘機の操縦とは、最近の義務教育は随分充実してるな」
「これぐらい乙女の嗜みですよ。…と言いたいところですがさすがにほとんど自動操縦です。とある《耳》の言い方が、私の《眼》も頼りに遠隔操作をしています」
どうやら遠くでコウモリもこちらの戦いを見ているようです。
風靡は銃を弾き飛ばされた代わりに一本の短いサバイバルナイフを手にします。リーチの差でシャルの方が有利でしたが、そこには圧倒的な実力の差があり、シャルは防戦一方となってしまいます。
風靡はシャルを回し蹴りで弾き飛ばしたところにさらに間合いを詰めようとしますが、その瞬間空からの狙撃が風靡を襲います!
「――邪魔だな」
風靡は足元の弾丸を躱しながらぼそりと呟きます。そして――
「へ?」
夏凪の視界に入ったのは――かぎ爪のついたロープを戦闘機に括り付け、それを手綱にして跳躍する風靡の姿でした!
風靡はコクピットに入り込み、斎川に向けてナイフを逆手に構えます!
「させない……っ!」
夏凪は風靡に向けて銃を発砲します!その銃弾は風靡の右肩を貫通しますが――
「痛み?そんなものは、使命の前では何の意味も持たない」
風靡は一切表情を変えず、ナイフをエンジンの投擲します!
そして戦闘機は制御不能となり、機体をアスファルトにこすりつけながら不時着しました。
夏凪と斎川は不時着した機体からどうにか這い出しますが――その前には加瀬風靡の姿が待ち構えていました!
「――まだ、ワタシを忘れてもらっちゃ困るわね」
風靡の前に再びシャルが立ちはだかります!
「お前らは、なんだ。仲間、絆、友情、想い、愛、繋がり、縁、――遺志。それが、世界の何に役立つ?」
そしてだんだんと風靡は苛立ったように続けます!
「斎川唯――お前が死ねば世界は救われる。シャーロット・有坂・アンダーソン――お前が斎川唯を殺せば世界は救われる。夏凪渚――お前がかつての名探偵のように強ければ世界は救われる。なのになぜそうしない?」
そして風靡は「できないなら世界を救おうと戦う者の足を引っ張るな!」と告げます!
「正しいよ」
夏凪が呟きます。
「だったらあたしは、あえて間違えているかもしれない選択肢を選びたい。たとえ正しくなくても、正義が勝てなくても、それでも最後に、大切な人が隣で笑ってる未来を選び取りたい!」
風靡を真っ向から否定した夏凪に対して、風靡は「平行線だな」と呟きます。
風靡は《調律者》として正義を執行するために、二人にトドメを刺そうとします!
「加瀬風靡、あんたはそこから一歩も動くことができない」
次の瞬間――夏凪の紅い目が光り、風靡の動きが止まります!しかし――
「こんな付け焼刃の能力でアタシを止められると思うな!」
風靡の振り落とそうとした右腕が徐々に動いていきます!そして風靡は鬼気迫る顔で激昂しようとしますが、ここでふと、その表情が消えます!
「なあ、あいつはどこだ?君塚君彦はさっきからどこにいる?」
ついさっき戦闘不能にした君塚の姿が見えないことに風靡は気づき、そしてすべてを察します!
「君塚君彦、お前――カメレオンの種を飲んだな!」
「副作用?そんなの知らん。五感でも寿命でも、好きなものを好きなだけ奪えばいい。全部養分としてくれてやる」
君彦は姿を消して風靡の下へ走り寄り、真正面から風靡を殴り飛ばします!
「これは俺の物語だ!」
エピローグ
「お巡りさんを逮捕とは、いい度胸だな」
風靡は右ほほを赤く腫らしながら、片手に手錠を嵌め、もう片方をガードレールに繋いで拘束されます。
そして風靡は飽きれた様子で君彦の様子を見ます。
「にしても、本当に《種》を飲んでやがるとはな」
「お前、死ぬぞ」「ああ、分かってる。まぁ身体がぶっ壊れた時は、ぶっ壊れた時だ」
「風靡さんあんた、やっぱり風靡さんだよ」
「《シエスタ》、大丈夫なのか?」
「もう私の使命は十分果たしましたから」「どういう、こと?」
「私は、シエスタ様が最後にやり残した仕事を手伝うために作られた、プログラムに過ぎません」「マームがやり残した仕事?」
「じゃあ、やっぱり、俺たちの周りでここ数日起こってた問題は全部…」「ええ。あなたたち四人が、心に秘めた問題を乗り越えるための課題です」
「だったら、シエスタはハッピーエンドを迎えられたのか?」
「君彦…違います。シエスタ様は、もうこの結末に満足しています。あなたたち四人という遺産を残し、そして抱える問題を解決した。それでシエスタ様の仕事は、もう―――」「違う!だって、あいつは泣いてたぞ」
「なぁ、《シエスタ》。お前が俺たちを誘拐してみせたあの一年前の過去の映像…その最後。俺が花粉によって倒れた後のあの、シエスタが最後に泣く場面まで見せたのは、お前の油断だったんじゃないのか?」
「それこそが、お前が仕込んだ間違い探しの本当の答えだったんだろ?」
「――いいか?―――俺はお前を諦めない!―――たとえお前がこの結末に満足しようとも、俺だけは絶対に認めない!―――もしかしたら、誰にも理解されないかもしれない!―――夏凪にも!斎川にも!シャーロットにも!―――そしてこれは、世界の理に背く行為なのかもしれない!―――それでも絶対に!―――いつか俺はお前を生き返らせる!―――必ず、必ずだ!」
「――バカか、君たちは」
【探偵はもう死んでいる】3巻ネタバレ・感想:まとめ
以上「探偵はもう、死んでいる」3巻のネタバレ後編でした!
今回はそれぞれのキャラが乗り越えるべき課題と向き合った巻でした!シャルの過去なんかも分かったりもしましたが、結局は最後シエスタに全て持ってかれた部分はありますね!
調律者の存在もちょこちょこ出てきたのでまだまだこれからが本番となりそうです!
4巻ネタバレ前編➡「探偵はもう、死んでいる」4巻のネタバレ前半
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