「たんもし」こと「探偵はもう、死んでいる。」の原作4巻のネタバレ・感想をしていきます!
3巻では個々のキャラの過去が描かれ、各々に乗り越える課題がありました!君塚達はシードを倒すために改めて向き合うこととなります!そして君彦がいったシエスタを生き返らせる方法はあるのでしょうか⁉
ボリュームが多いので前編・後編の2記事でまとめています!今記事は原作4巻のネタバレ・感想の前半の記事です。
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【探偵はもう死んでいる】4巻ネタバレ・感想、前編
では「探偵はもう、死んでいる。」の原作4巻の内容を簡単にですがネタバレしていきます!
今記事は原作4巻の前半記事です!
後半記事はコチラ➡4巻のネタバレ・感想後編!
風靡との決戦後
君彦は傷ついたシエスタの人工知能を搭載した《シエスタ》を抱え、救助を待っていました。すると《シエスタ》の手が君彦の胸ポケットへ何かを忍ばせます。
「《シエスタ》?」
「シエスタ様からです」
《シエスタ》は4人が無事課題を乗り越えた際に、あるものを君彦に渡すよう本物のシエスタから頼まれていました。
「なるほど。ここまでが、お前の仕事か」
「ええ。そしてここまでが、シエスタ様の想定していた未来です」
それを聞いた君彦はシエスタの素晴らしい手腕に驚きますが、それでも君彦は「ここからは俺たちの好きにやらせてもらおう」と言い放ちます。
「修理を受けてまたいつか戻ってきます。それよりもシエスタ様のこと、よろしくお願いします」
「ああ、任せろ。いつか必ず……」
「「あたしたちが、シエスタを生き返らせる」」
夏凪も君彦の言葉に重ねるように力強く宣言します!
それを聞いた《シエスタ》は「任せました」と言い、安心したかのように微笑みます。
誓いの日から半日後
「そういうわけでクソガキ、お前を懲役二万年の刑に処する」
葉巻を加えた加瀬風靡は、君彦たちをタワーマンションの最上階へと呼び出していました。
「…理不尽だ。まるで身に覚えがない」
「身に覚えがない?ハッ、笑わせるな。残念だが、君塚君彦。お前にはバイクによる法定速度違反、度重なる銃刀法違反、暴行、傷害、そして公務執行妨害の容疑がかかっている」
風靡は君彦を睨みつけながらそう言います。
するとそれを見かけた斎川が君彦の味方に付きます!
「確かに君塚さんは加瀬さんを殴り飛ばしてしまったかもしれません。しかしそれは仕方のないことなんです――愛ゆえなので」
そして斎川はテーブルをばーんと叩いて立ち上がり、君彦がいかにシエスタのことを愛しているのかを熱弁します!
「ぶっ殺す」
「きゃー!君塚さん怖いです!」
それを見た風靡はあきれ果て、本題へと話を戻します。
そして改めて4人はテーブルにつき、上座に座った風靡さんの説明を聞くこととなりました。
「夏凪渚、斎川唯、シャーロット・有坂・アンダーソン、それに君塚君彦――お前たちは《調律者》に逆らい、別の方法でシードを倒す。本当にそれでいいんだな」
鋭い視線で風靡は全員を見渡します!それに一番最初に答えたのは夏凪でした。
「そのつもりです。あたしたちは誰も殺させないし、誰も犠牲になんてさせない。みんなで笑ってみんなで最後に勝つ。それだけがあたしたちの目標で、勝利条件。」
それを聞いた風靡は、不満そうに「…ふう」とため息をつき、再び4人を見渡してこういいます。
「十日間の猶予をやる。その間に、シードを確実に討伐できるという証明をしてみせろ。それが、アタシがお前たちに与えられるギリギリの恩情だ」
「それができなければ?」
「その娘を今度こそ殺す!」
風靡から時間を与えられた君彦たちは今後のことを考えます。すると君彦は《シエスタ》から最後に胸ポケットに渡されたものを思い出しそれを取り出しました。
それはシエスタが《七つ道具》として使っていたマスターキーでした!
「――ああ、これはそういう意味か」
君彦は昔、シエスタと暮らしていたロンドンにて、一度シエスタが机の引き出しに慌てて何かを隠していたのを思い出します。その引き出しは君彦のピッキングでも開けることは出来なく、シエスタからは「――いつか私からこの鍵を奪い取ってみせることだね」と言われていました。
君彦はそこに何かシードを倒す手がかりがあるのだと思い、昔暮らしていたロンドンへと行くことを決めます!
「お前、ロンドンの家もまだそのままなのか?」
「まぁ、はい。毎月家賃は引き落とされるんで、おかげで金欠ですけど」
「?だったらなぜ引き払わない?」
「…や、それは」
その会話に斎川が入り込んできます!
「君塚さんは、シエスタさんとの愛の巣を無くしたくなかったんです!」
「うるさい!斎川、このターンボケすぎだ!」
そして改めて今後の方針を決めていきます!
君彦はシードを倒す手がかりを見つけるためにロンドンへ行きます!それを聞いた夏凪も一緒にロンドンへと行くこととなりました。
そして残る斎川とシャルに関しては、風靡と共にシードと戦うための術を身に着けることとなりました。
「まずシャーロットに関しては、一つやってもらいたい仕事がある」
風靡はそう言い、シャルに何かの仕事を頼みます。そして残る斎川の処遇を決める際に――
「オレに任せろ」
後ろから大きな窓が割れる音がして、スーツに身を包んだ金髪の男が入ってきました!
「コウモリ?」
共闘準備
「お前、どの面下げてアタシの前に現れた」
立ち上がった風靡は拳銃を抜きコウモリに銃口を向けます!
「なに、だから今こうしてあんたらの味方につこうって言ってんじゃねぇか。」
するとコウモリは向けられた銃口には目もくれず、斎川の方を見ます!
「オレがサファイアの娘の面倒を見てやる」
コウモリは先日、スカーレットと共に君塚と斎川の下へと現れましたが、交渉は決裂していました。
「コウモリお前、諦めたんじゃなかったのか?」
「ハハッ、そもそもオレとお前らの目的は一緒のはずだ。そして今はその物騒な女も強力関係にあるんだろう?だったらオレも仲間に交ぜてくれてもいいと思うが」
今回の作戦会議もコウモリは《耳》で聞いており、《SPES》討伐の輪に加わろうとします。すると風靡は「おまえに何ができる?」と問います。
「左眼の覚醒」
どうやら斎川の左眼はもう一段階能力を引き上げることができるらしく、コウモリはそれが可能であるようです。
斎川はそれを聞き、「分かりました!ではコウモリさんにお願いします!」と承諾します!
そして今後の方針が決まります!
君彦と夏凪はロンドンへシードを倒すための手がかりを探しに行き、斎川とシャルは残ってシードと戦うための力をつける。
「――一応訊くが、ワトソン。お前のやるべきことは本当にそれでいいのか?」
コウモリは君彦が今朝、シエスタを生き返らせることについて聞いており、シードを倒すことよりもシエスタを生き返らせることで行動しないのかを訊きます。
「あいつが生き返った時に、世界が滅んでいたら本末転倒だからな」
君彦はそう簡単にシエスタを生き返す方法は見つからないだろうと判断しており、昨夜の吸血鬼が生き返したような方法ではなくもっと時間をかけて別の方法を模索するようです。
「…はぁ、これは本来言うべきことじゃないかもしれないが。ちょうどお前が行くロンドンには一人、アタシらと同じ存在がいるはずだ。そいつにその話を持っていけば、あるいは何かが変わるかもしれん」
風靡はロンドンに新たな《調律者》の存在がいることを明かします。そうして風靡は一枚の写真を放り投げながらこう言います。
「《巫女》だ。その少女はこの世界の、全ての未来を知っている」
再び上空一万メートルへ
君彦と夏凪は飛行機にてロンドンへと向かいます!
二人はロンドンへ行き、シエスタの遺産を見つけた後、調律者である《巫女》に会う予定です。
《巫女》には未来を予知する力があり、もしかしたらシエスタが生き返るという未来が存在するのであれば《巫女》から有力な情報を得られる踏んでいました。
そして君彦と夏凪が飛行機に乗っているとCAがこんなことを言い出します。
「お客様の中に、探偵の方はいらっしゃいませんか?」
この言葉を聞き、君彦は4年前の出来事を思い出します。
「巻き込まれ体質もここに極まれりだな…」
そして君彦は声をかけている客室乗務員を見ると、偶然にも4年前のハイジャック事件にて同じく助けを求めてきた客室乗務員でした!
「お久しぶりでございます、お客様。その節は大変お世話になりました」
見た目は20代後半の客室乗務員の方も覚えていたようです。
「申し遅れました。わたくし、オリビアと申します。またお目にかかれて嬉しいです――キミヅカ様」
君彦は少しオリビアと話した後、「それで?、また何か事件か?」と訊きます。すると日本語と英語であるアナウンスが流れます。
『お呼びいたします。座席番号A20にご搭乗のミア・ウィットロック様、このアナウンスをお聞きになられましたら、どうぞお近くの客室乗務員までお声かけ下さい』
このアナウンスを聞き、オリビアは君彦たちにこのアナウンスで流れた人物が離陸した後に居なくなったということを告げます。
機内の中を全て探したようですが、未だ発見できていないようです。
「それで探偵をご所望というわけか…」
そして夏凪は「もし見つからなかったどうなるの?」とオリビアに訊くと――
「ええ、日本に引き返すことになりますね」
どうやら君彦たちはロンドンへ行く前にまず密室トリックを解かなければいけなくなりました。
密室トリック
「事件の匂いがするわね」
「事件というか別の匂いがしそうだが」
夏凪と君彦は機内の中を探しに行きます。しかし二人は個室のトイレなどもくまなく探しましたが、行方不明のミアという女性は見つかりませんでした。
「というか、ミア・ウィットロックはどうして身を隠す必要があるの?」
夏凪は不意にそんな疑問を口にします。君彦はもしかしたら監禁されているのかも知れないと予想し、今回の事件も《SPES》が関わっている可能性も出てきました。
しかし結果は分からず、とりあえず二人は席に戻り機内食を食べることにします。
「ノックスの十戒」
すると夏凪は機内食を食べながら真剣な顔でそう呟きます。
「ノックスの十戒っていうのは、イギリスの推理小説ロナルド・ノックスが1928年に発表した、推理小説を書くうえで守らなければいけない十の掟のこと」
「ああ、俺の一応は知っている。推理小説における謎解きは、読者にフェアでなければならないという理念の下に作られたルールだ…けど、それがどうかしたのか?」
夏凪はもしかしたら今直面している謎解きもそれに則ったら何か見えてくるものがあるかもしれないと言います。
そして今回の事件と謎解きのヒントになりそうなことを考え――
「「犯行現場に秘密の抜け穴が二つ以上あってはならない」」
二人は思わず互いに顔を見合わせます!
「じゃあさ、このルールを逆手にとって考えれば」
「ああ、飛行機の中にも一つだけなら隠れ場所があってもいいはずだ」
答え合わせ
君彦と夏凪はオリビアを呼び出し、ファーストクラスの席へと行きます。
「それで、ウィットロック様の居場所が分かったというのは本当でしょうか?」
「当然だ、それを伝えるためにここに来た。…が、あとは任せていいか?夏凪」
そして夏凪は今回のトリックについて説明する前に簡単な質問をオリビアに投げかけます。
「そもそも、ミア・ウィットロックを隠したのはあなたよね?――ミス・オリビア?」
そう言われたオリビアは反論するわけでもなく、まずは夏凪の仮説を聞くことにします。
「機内のどこを探してもあたしや君塚には見つけれない。だったら、最初からあたしたちの見つからない場所に隠れてるって考えるのは当然じゃない?」
「…なるほど。プロの手が加わっていると」
「そう。だからきっとミア・ウィットロックは、あたしや君塚の手の届かない場所に匿われている。例えばコクピットとか…あるいは、機内用のミールカートとか」
それを聞いたオリビアは「…なるほど、面白い仮説です」と言いますが、なぜオリビアがそんなことをしたのかを今度は問います。
「ミア・ウィットロックとは、世界を守る《調律者》が一人《巫女》のことだからだ」
ここで急に君彦が事件の真相を言います。
「巫女とは、何のことでしょう?」
「今さらとぼけなくていい。あんたがこっち側の人間であることは分かっている」
オリビアは君彦の言い分を聞き、「わたくしがこの事件を引き起こした張本人ならば、なぜあなたたちに解決を依頼するのか?」という矛盾を問います。
「あなたは何かしらの使命を負って、あたしらと巫女を会わせないようにしていた。」
でも、と夏凪はオリビアの真意をつくようにこう推理します!
「心のどこかで、あたしたちと巫女を会わせたいと思っていた…もしくわは、あたしたちが巫女に会うに値する存在であることを願って、このなぞ解きを通して試していた」
これが君彦と夏凪が考えた結論でした!
「…お見事です」
オリビアは薄く微笑み、君彦達の仮説を認めます。
「ええ、ミア・ウィットロック様が行方をくらませたのは、わたくしの主導によるものです。そしてその目的や、この事件引き起こしたのは張本人であるわたくしがあなた方にその解決を依頼した理由も、お察し頂いている通りです。」
夏凪は最後に、一つだけ解決していない疑問としてオリビアの正体について訊きます。
「わたくしは代々、《巫女》に仕える家系の者――いわば、巫女の使いです」
《巫女》であるミア・ウィットロックは他の《調律者》にすら会おうとしない方であるようで、事前に巫女への謁見を希望される方はオリビアが振るいにかけるようです。
「――さて、少しお喋りが長くなってしまいましたね。そろそろ本業に戻ることにいたしましょう」
立ち去ろうとするオリビアに君彦は「結局俺たちは巫女に会えないのか?」と問います。
「ふふ、そうですね。わたくし個人としてはそれを望むのですが…巫女に会えるか否かは、神のみぞ知る、にございます。」
オリビアはそう言い、君彦たちの前を去っていき、客室乗務員としての仕事へと戻っていきました。
ロンドンへ
飛行機での事件から10時間後、君彦と夏凪は無事ロンドンへと到着し、ホテルのチェックインも済ませました。
「シエスタと君塚の愛の巣に行くんじゃなかったの?」
「そうはいっても鍵がないからな」
君彦はポケットの中身を夏凪に見せて何もないことを確認させます。どうやら君彦は鍵を誰かに盗まれたようでした。
「はぁ。盗まれるかなぁ、普通」
「普通じゃないから盗まれるんだろうなあ」
君彦の“巻き込まれ体質”によって空港からシエスタの家に向かう途中、ふと財布と肝心の《七つ道具》であるマスターキーがなくなっていることに気づきました。そして仕方なくホテルへと拠点を置くことにします。
二人は今後の行動について話し合います。
そしてとりあえずはシエスタの家に行くことは置いておいて、先に《巫女》に会いに行くことになりました。
とはいえ巫女を探そうとしても何も手がかりがなく、その方法を考える為君彦はジャケットをクローゼットにしまおうとした時――一冊の本が置かれていることに気づきます。
「夏凪、これに心当たりはあるか?」
「えっ、これって…」
「ああ、間違いない――これは《聖典》だ」
その後二人はホテル近くのレストランへと行き、昼食をとりつつ《聖典》について話合います。
「まさか、またこれを見ることになるとはな」
「これも偶然…なわけないよね、きっと」
《聖典》を以前持っていたのは夏凪も裏人格であるヘルであり、その本来の持ち主はシードでした。それがまた一年越しに君彦の目の前に現れたことは、偶然に一言では片づけられないと考えます。
「――巫女」
「実は、あたしも同じことを思ってた」
《聖典》は未来に起こる出来事が記されており、もしそんなものを書いている人物がいるとなれば《巫女》しかいないという結論にたどり着きます。
「つまりは《聖典》の本来の所有者は巫女であり、シードは過去、それを何らかの方法で彼女から奪っていた…って説が有力かもな」
そして二人は《聖典》の中を開き、現状の最後のページを開きます。
「怪物《メデューサ》がロンドンの街を襲う、ね」
もしこれが本物の聖典であるならば一週間後、ロンドンではメデューサなる怪物が街を襲うらしいようです。
「これも《巫女》陣営があたしたちに仕掛けた試験ってことよね。あたしたちが本当に巫女に会うに値する人物か否か判断するための」
「そう考えるのが自然だろうな。端的に言えば、『妾に会いたければ、ロンドンの街を恐怖に陥れる怪物《メデューサ》を倒すことよの』という巫女のメッセージだろう」
夏凪は君彦の巫女の物真似を気持ちが悪も、本当にシエスタの家よりも巫女に会いに行くことを優先していいのかを訊きます。
「目の前の事件に見て見ぬふりをしたまま、あの家には帰れないからな」
「…そっか。ま、君塚がそれでいいならそれでいっか」
「それに今回のこの事件、少し心当たりもあってな」
首をかしげる夏凪に、君彦は昔体験した出来事を回想します。
「実は2年ほど前、俺はシエスタと共に一度《メデューサ》に遭遇している」
実地調査へ
翌日、君彦と夏凪は早速メデューサについての調査を始め、聞き込みの結果、バスに乗ってと会う場所へと向かいます。
夏凪はバスに乗っている間、窓をぼーっと見つめており、君彦はそれを見て「寝不足か?」と尋ねます。
「昨日の夜、あの子の夢を見たの」
夏凪の言うあの子とは「ヘル」のことであり、以前も心臓に宿したシエスタと夢の中で対話したことのある夏凪は、誰にも干渉できない別の世界を持っているようです。
「ヘルとは何を話したんだ?」
「…なんかめちゃくちゃ怒られた」
ヘルは夏凪に対して、自分が犯した罪は自分で取ると言っており、勝手に背負い込むなと主張していたようです。夏凪はそれに反対し、最後はつかみ合いの喧嘩となりました。
「シエスタの時と同じじゃねぇか」
そんなことを話しているとバスは目的地へと着きます。
バスを降りると、そこには白い病院がありました。聞き込みの結果、この病院にはメデューサに襲われたという被害者がいるようです。
そして二人は早速その被害者に会いに行くことにします!
「これがメデューサの被害者か」
病室にいたのは、四十代ぐらいに見える一人の男性。ベットの上に寝かされたその男性は自発呼吸と、時折瞬きを繰り返すだけで喋ることも指を動かすことも出来ませんでした。
「ねぇ、君塚。あたしたち、この人とどっかで会ったことない?」
二人は再び詳しくこの事件を調査し、夏凪の紅い目の力なども使って担当医師からの情報をもとにとある場所へと訪れます。
それはイギリス郊外にある教会の墓地でした。
そして夏凪はそのうちの一つの墓標の前へと行き膝を折ります。
「遅くなってごめんなさい――デイジーさん」
デイジー・ベネット――それはかつてロンドンの街にて起こった《ジャック・ザ・デビル》事件にて犠牲となった五名の内の、最後の犠牲者である名です。
1年前、夏凪の裏人格であるヘルが自身の心臓のバッテリーとして殺害した被害者であり、夏凪はある思いを込めてこの場所へと訪れました。
「あたしはもう、その過去を受け止めている。受け止めた上で、あたしができる精一杯の償いをする」
そして夏凪は君彦に笑顔を向け――
「だから、あたしは大丈夫。君塚は自分の仕事を果たしに行って?」
「本当にいいのか?俺がいなくて淋しくないか?夜泣きしないか?」
「子供か。シエスタの姿が見当たらなくて家中探しまくった君塚じゃないんだから」
夏凪は君彦と一旦別れると告げます。そして――
「それに、鍵だって見つかったんでしょ?」
「…ああ。偶然にもこのタイミングでな」
どうやら君彦と夏凪は何らかの意思によって、この場で一旦別行動をとらされるらしい。
「じゃあなにかあったら連絡くれ。巨大ロボットに乗って駆け付ける」
「うん、お願いだから世界観のスケール守って?過去のことは反省してる?」
そうして君彦と夏凪は一旦別行動を取ります。
別行動――夏凪
君彦が去ってから15分ほどした後、夏凪のところに60代ぐらいの一人の女性が花を抱えて歩いてきました。
「あら、娘の知り合いかしら?」
「ご部沙汰しております――ローズ・ベネットさん」
ローズ・ベネット――彼女は、《ジャック・ザ・デビル》事件の5にっめの被害者であるデイジー・ベネットの母親です。
「…ええと、お嬢さんとお会いしたこと、あったかしら?」
夫人はどこか困った様子で微笑を浮かべます。
夏凪は少し話をはぐらかしつつ、夫人に1年前のことを話していきます。
「当時は悲しみが癒えないうちに、毎日、事件のことでマスコミの対応に追われてね」
「ええ、そう聞いています。それから、あの議員のことも」
夏凪がそう答えると、夫人は一瞬ピクリと筋肉を強張らせます。
「ローズ・ベネットさん、あなたがメデューサなんですよね」
「…ふふ、何を言ってるのかしら?」
ローズ夫人がさっき語っていた、彼女を苦しめたマスコミと議員の男。彼らこそ君塚と一緒に病院で会ったメデューサの被害者でした。
そして彼らの他にもメデューサの被害者と思われる人物が複数おり、全員デイジー・ベネットに何らかの因縁があることが調べで分かっていました。
「ローズさん。あなたはメデューサとなって、娘さんの敵を討とうとした…いや、娘さんの名誉をけがそうとした人たちに、一矢報いようとした」
夫人はいつの間にか笑みを消し、険しい顔つきになります。
「そんなの、あなたの憶測に過ぎないわ。ありがちな動機を並べるだけで、具体的な証拠は何もない」
「…うん、確かに証拠はこの場にはない」
でも、と夏凪は続けます。
「あなたの家を探せば必ず、毒物が出てくるはず」
この墓地に来る前に、夏凪は病院で担当医師に詳しい病気の症状を聞いていました。被害者の身体からは共通してとある毒物が検出されたという話です。
「…だって、許せないじゃない。」
夫人は観念したかのように夏凪の仮説を認めます。
「そう、私よ。私がきっと、あなたたちの言う怪物――メデューサ」
夫人は娘が死んで悲しみに暮れる中、ある日ポストに毒物が入っており、それを使って娘をけがした人物たちの口を封じていました。
ローズ・ベネットは娘の死を冒涜する存在を決して許さない。そしてローズ・ベネットはメデューサへとなっていきました。
夏凪はそんな夫人を前にして何を言ったらいいのか迷います。誰の言葉であれば彼女を救ってあげられるのか考え、夏凪は髪の毛を縛っていた赤いリボンを外し、もう一人のパートナーを頼りました!
「お願い、力を貸して」
紅いリボンを外した夏凪の手には赤いリボンが握られ――
「だから最初からボクがやると言っている」
夏凪の身体をしたヘルが目覚めます!
ヘルはご主人様の願いを叶えるべく、座り込んだ夫人に視線を向けます。
「キミが掴まされたのはあくまでも粗悪品だ。毒物と言っても一時的な効果しかなく、今は意識混濁に陥っている彼らもじきに目を覚ますだろう」
夫人に毒物を提供したのは《SPES》の半人造人間である――クラゲであるらしく、彼は小金稼ぎのために《SPES》の末端にそれを売りさばかせていたようです。
「っ、近づくなら撃つわ!」
夫人はカバンから一丁の拳銃を取り出し、ヘルに銃口を向けます!
「その銃弾はボクには当たらない」
ヘルの紅い目が発動し、次の瞬間、彼女から放たれた銃弾は大きく的を外して通り過ぎます。
「やめて、来ないで…。デイジー…ッ」
近寄るヘルに対して、夫人は怖がるように怯えます。そしてヘルは――
「怖がらせて、すまない」
夫人に対してまずは謝罪をします。
「ローズ・ベネット。これはボクからではない、彼女からの贈り物だ」
ヘルの能力は《言霊》――言葉に霊力を宿すヘルは、血を交わした相手と言葉を交わすことができます。よって1年前に、心臓を取り換える際に血を交えた、デイジー・ベネットの遺した最後の言葉も覚えていました。
「彼女はきっと、こう言っていた。愛している、マム」
そしてヘルはどこか夏凪の身体のどこかへと去っていきます。
夏凪の視界が開けると、そこにローズ・ベネットがふわりと夏凪の肩に倒れこんできます。
「――デイジー」
そうして夫人は意識を失ったかのように、夏凪の胸の中で眠りに落ちます。
「ごめんなさい。これだけで贖罪を果たしたとは言えないけど」
夏凪はこんなことで1年前の罪が許されるはずはないと思いましたが、ただそれでもこの先自分にできることは《探偵》という立場に囚われず、人を救っていくことだけなのだと誓います。
そして今何よりも取り組むべきことはシードを倒すこと。それは夏凪一人の力では果たせなく仲間の力が必要です。
「頼んだわよ、君塚」
別行動――君塚
夏凪と別れた君彦は、盗まれていた財布とマスターキーを取りにとある場所へと訪れていました。
「ここにあんまりいい思い出はないんだが」
そこは以前君彦がヘルによって誘拐された場所である、ウェストウィンスター宮殿。シエスタとヘルが激しい戦いを繰り広げた場所でした。
どうやらここに君彦を呼び出したい人物がいるようで、君彦はエレベーターで上へと向かいます。そして指定された目の前のドアへと意を決して開けると――
そこにはロンドンの街を一望できる部屋と一人の少女が立っていました。
「やっと会えたな、ミア・ウィットロック」
その少女の衣装は白衣と日袴による巫女装束であり、青みのかかった髪の毛が特徴の小さな少女でした。
「未来を変える方法を教えてくれ」
「無いわよ、そんなの」
ミアは巫女装束から私服へと着替え、大きな本棚に書物を並べながら素気無く君彦に言います。
「ここにいるのはあんただけか?てっきり使いの者がいると思ったが」
「…はめられたのよ」
どいうやらミアはオリビアによって君彦と引き会わせるようにしていたようです。
「私個人としてはあなたに用はないし、興味もない。できれば顔も見たくないし、同じ空気も吸っていたくない。早くお家に帰ってもらえる?」
「悪いが、オレは目的を果たすまでは帰れない」
そして君彦はテーブルの上に積まれていた本を取り、これが《聖典》であることをミアに確かめます。
「ええ、そうよ。十万と二百万七十万九冊ーーここにある《聖典》は全て、私を含む歴代の巫女によって編纂されてきた」
ミア曰く《巫女》の力は未来予知の力であり、断片的ではあるもの世界の危機を見通すことができます。その能力を買われてミアは調律者へとなり、いつか来る世界の結末を聖典に記す役目を与えらえました。
そしてこの力を持つ人間は、世界で一人しか存在しなく、その人物が死ぬとその瞬間、能力は別の誰かへと移るようです。
「ミアにはいつ、その力が宿ったんだ?」
「もう十年前になるかしら。とある自然災害が近々起こることを、ある日突然私がまるでうわ言のように呟きだして…それを両親が聞いていたことが発端だったそうよ」
ミアは予言めいた能力の詳細と共に、自身の過去も語ります。
ミアの予言は、ふいに脳裏にイメージとして落ちてくるようで、無意識のうちにそれを言語化して、紙にその内容を書き記します。そんなことを続けていたらミアは神の子と呼ばれるようになり、ミアの両親はその能力に目をつけて宗教団体を作り上げお金儲けを始めました。
しかしミアの予知はあくまで世界の危機を予知するだけのものであり、一人の信者の未来を占うことなどは出来ません。なので開いた宗教も成り立たず、両親は神のお告げをでっちあげ信者からお金を巻き上げていました。
まだ幼かったミアはそれ抵抗できなく、両親からは地下室に閉じ込められます。
そしてある日、嘘の助言に騙されて大金を失った信者が、その恨みからミアの住む家に火を点け両親は死んでしまいます。
地下室に居たミアだけは助かり、一人となったミアはある《名探偵》に拾われます。
「シエスタは《名探偵》の仕事の一つとして、あんたを保護したのか?」
「元々は《怪盗》にその任務が与えられていたそうよ。でも《名探偵》が代わって私を盗み出した。『あの男だけは信用ならない』と言ってね」
ここでいう《怪盗》とは調律者の役職である《怪盗》です。
「《怪盗》が信用ならないって、どういうことだ?仮にも正義の味方だろ?」
「《怪盗》は十二人いる《調律者》の中でも唯一、明確に連邦憲章に違反した裏切りものよ。今はとある大罪を犯して、地下深くに幽閉されている。そして《名探偵》はただ一人、その危険性に事前に勘付いていた。だからこそ《怪盗》を頼らず、自分の手で私を連れ出してくれた」
《怪盗》は本来であれば許されるはずがない《聖典》の一部を盗み出して幽閉されているようです。
「ねぇ、あなたはどう思う?」
ミアは君彦に近づき問いかけます。
「すべてを賭して世界の敵と戦って、やがてそんな結末を迎えるのが《調律者》のお役目だとして――たとえそうやって世界の危機を一つ乗り越えたとしても、次々とまた敵はやって来る。戦いは決して終わらない。この世界が滅びるまで中身だけを変えながら、騙し騙し、世界を守るフリをし続ける。そんな未来に、あなたは希望が持てる?」
どのような未来を選択しても行きつく先は世界の終焉。
ミアはそんな一生続く未来を観測し続けていました。
「だから私はせめて、この寿命が尽きるまで…もしくは世界が終局を迎えるまで、この塔の中でお役目を果たし続ける。変な期待はしない。なにかを変えようだなんて思わない。望まない、願わない、委ねない。私はただ《名探偵》がくれた仕事を、粛々と一人でこなすだけ」
「…ああ、今ようやくあんたのスタンスが理解できた」
君彦は彼女の判断を理解することは出来ましたが、共感はしませんでした!
そして君彦はミアをお嬢様抱っこの要領で抱きかかえます。
「…へ?」
「今から俺が、未来がいかに不確定なものかっていうのを教えてやる」
その瞬間――部屋中に警報が鳴り響き、窓ガラスも音を立てて割れていきます。
「な、なに?何が起こっているの」
今度は外で爆発音が鳴り、地震のように床が揺れます。
「あまり俺の巻き込まれ体質をなめてもらったら困るな」
そうして君彦はミアを抱きかかえたまま外へと飛び出します!
巻き込まれ体質―バスジャック―
塔を脱出した君彦とミアは二人でロンドンの街を歩いていました。
「な、なんでこんなことに…」
ミアはさっきまでのクールな表情は消え去り、辺りを見渡しながら君彦の後を歩きます。
「さっきのあれは一体…」
「さぁ、テロじゃないか」
「っ、なんでそんな平気なわけ」
ようやく感情を表すようになったミアはふらふらとその場に座り込みます。どうやら普段部屋に引きこもった生活をしているので外へ出かけるのは苦手なようです。
「外の世界に興味を持て。趣味を作れ。友人の一人でもできたら多少は前向きになれる」
「前向きになったところで、どうせ世界は滅びるし…」
ミアは大きくため息をつき、悪態をつきます。
君彦はそんなミアの手をグッと引くと、さっきまでミアの立っていた場所には、割れた植木鉢が落ちてきていました。
「よし、行くぞ」
「…やっぱりあなたと一緒に居ると余計なトラブルしか起こらない」
すると君彦はミアを連れてバス停へと行き、来たバスへと乗り込みます。
「――ねぇあなたはいつもそんな感じなの?」
「そんな感じとは?スマートで気が利いて実は格好良いと?」
「無理してボケなくていいわよ。いつもそんなに無計画なのって訊いてるの」
「最後に行き着くゴールは決めてある。俺はいつか必ず、シエスタを生き返らせる」
それだけが君彦の願いであり、その為にミアへと会いに来ました。君彦はシエスタの生き返る未来も存在すると信じておりその可能性をミアへ問う前に――
「悪い、お喋りは一旦ここまでらしい」
ミアが首をかしげると同時に社内に女性の悲鳴が響き渡ります。
――そこにはライフルを持った男が立っていました!
「バスジャック、か」
隣の席でミアは小動物のように膝を抱えて小さく丸まります。
「どうだ?こんな未来は読めなかっただろ?」
「なんでこの状況で偉そうにできるのよ…」
ミアは恨みがましいい視線で君彦を見つめます。
次の瞬間――銃声が鳴り、男は「動くな。動けばてめぇらの命の保証はない」と告げます!
「どうするの?」
ミアは小声で君彦に訊いてきます。
「ああ、逆にどうしたらいいと思う?」
「肝心なところで頼りにならない…」
ミアは《調律者》の中でも戦闘は得意ではありません。
「私には《暗殺者》の鉄のような使命感も、《吸血鬼》の世界を滅ぼす強さも、《名探偵》の死さえ恐れぬ勇気もない。だから私はあの時、センパイの賭けを止められなかった」
「ミア、お前は…」
次の瞬間――バスジャック犯が興奮したように銃を構え、「――誰だ!誰が喋っている!」と忠告します。どうやらバスジャック犯はまだ君彦たちの会話には気づいていないようです。
「あなたはの言う通り、未来が変わることはあるわ」
ミアはさっきよりも小さな声で喋り、最近観測した未来が変わったことを確かめるために日本へと行っていたことを話します。
それは《SPES》にまつわることであり、ミアが観測したはずの未来は、サファイアの娘である斎川唯が《暗殺者》に殺され、結果としてシードが器を失うという結末でしたが、そのルートは覆され、その中心には君彦たちがいました。
「元々、先代の《巫女》によって《聖典》に書き記されていた《SPES》と《名探偵》の戦いは…後者の敗北によって終わりを迎えていた」
「シエスタが、シードやヘルに敗れると?」
「ええ。そうしてセンパイは死に、シードは生き残ったヘルを器とする。そんな最悪な未来が《聖典》には書かれていた」
十年近く前のことであるとミアは続けます。
「だけど4年前、センパイはあなたと出会った。そしてあなた達二人は、《聖典》に記されたはずの未来を少しずつ変え始めた。これならセンパイの死という結末を避けられるかもしれない、そう感じながら私は1年半前、改めて《SPES》にまつわる未来を視た。そして結末は――」
「――シエスタとヘルが相打ちとなり、シードが器を失うという最後、か」
ミアはそれでもあきらめることはなく、シエスタを救える方法を考えましたが、結局はシエスタもその時は覚悟していたようで止められなかったとのことです。
「あなたの言う通り、確かに未来は変わり得る。でも、最後の未来だけは変わらない」
なのでミアは未来を変えようとしなく、ただ観測するだけ。ミア・ウィットロックは世界の終焉を迎えるその日までただひたすらその目に映った未来を手記に綴るという役目を果たします。
「でも俺たちは、シエスタの意志も超えるつもりだ」
ミアが目を見開きます。
そしてバスジャック犯は「――さっきから誰だ!誰が喋っている!」
「こっちが大事な話をしている最中にバスジャックするな!」
君彦はミアの手を取りながら立ち上がりそう言います!
「ちょっと何やってるの!」
「心配するな、お前の姿も相手には見えていない」
君彦は最初からカメレオンの種による力でミアと共に姿を消していました!
バスジャック犯は音を頼りに発砲してきますが、君彦たちは空いた座席に身を潜らせながら銃弾を躱します。
「だから頼む。シエスタが生き返る未来を、一緒に見つけてほしい」
「…本当にそんな未来が存在すると?」
「無ければ作る。今度は俺が世界を巻き込みながらな」
君彦は再びミアの手を取りバスジャック犯の下へと走り出します!しかし普段部屋に閉じこもっているミアは足をもたつかせながら大きく息を乱しました。
「ミア、自分の足をよく見ろ」
君彦がそういった刹那――バスジャック犯はもう一人乗客に紛れていたらしく、君彦はミアの手をほどき座席に立っていたもう一人の男にタックルを喰らわせます。
「ミア!お前がたとえ未来を変えたくないと願っても、もう遅い!だってそうだろ!その靴を今お前が履いている意味を考えろ!」
急にミアの姿が見えたバスジャック犯は驚き、「クソったれがあああああ」と叫び銃を乱射しますが、その銃弾は誰もいない空間に放たれます。
「あああああああああああ!」
そして――高く飛んだ少女のつま先が、バズジャック犯の頭を蹴り飛ばしました!
君彦は知っています―――その靴は空をも駆ける靴であると。
未来へ向けた伏線
「疲れた…もう一生外出なんてしない…」
あの後、ミアの活躍によってバスジャック犯は捕まり、君塚とミアは時計塔への帰路についていました。
「私がこうなったのは、少なくともあなたのせいだから」
ミアは月夜の下、小さな声で囁きます。
「何度でも言うわ。私が部屋を飛び出したのは、あなたのせい。散々トラブルに巻き込まれたのもあなたのせい。それから…ほんの少しだけ、未来を変えてみたくなったのも、あなたのせい。全部、全部、あなたのせい」
そしてミアは君塚に「責任取ってよね?」と少し期待した表情で話します。
「ああ、責任ぐらい、いつだって、何度だって取ってやる」
その後、君塚とミアは例の時計塔へと帰り、扉を開けると――そこには夏凪がいました。そしてもう一人、飛行機の客室乗務員であったオリビアの姿もあります。
「お帰りなさいませ、巫女様。いつもと一味違う日常はいかがでしたか?」
「…オリビアのばか」
ミアはオリビアの胸に顔をうずめます。それだけで二人の関係性は見えてきました。
するとオリビアは全員が揃ったことを確認し、自分のことは気にせず本題を話すよう催促します。
この時の本題とは――シエスタが生き返る未来を観測してもらうことです。
「改めて訊くわ。あなた達は本当に、《名探偵》を取り戻すつもりなのよね?」
改めて訊くミアに対して、君彦と夏凪は当然シエスタを生き返らせるためにはどんなことをすると誓います!
「君塚君彦――あなたが本当に世界の特異点になることを望むと言うのなら、あるいわ」
ミアはどこか儚げな微笑をしてこう言いました。
名探偵からの手紙
結局ミアは、あの時点でシエスタが生き返るという未来が存在するか否かについての答えは明言しませんでした。
そしてミアは《調律者》同志で大事な話があるからということで、新しい《名探偵》候補である夏凪を残して、君塚は追い出されます。
君彦はこの時間に、本来の目的であった最初の目的を果たしに行きます。
「――懐かしいな」
そこは以前シエスタと共に暮らしていた事務所兼住居です。
エレベーターのない階段を3階まで上り、鍵を挿して扉を開けます。もちろん中には誰も居なく空っぽの部屋でした。
君彦は目的である、シエスタの書斎へと足を踏み入り、目的である引き出しをマスターキーで開けます。
そこには入っていたのは一通の手紙でした!
『バカか、君は』
本文一行目はシエスタの罵倒から始まります。そしてどんどんと続きを読むと――
『《SPES》とその親であるシードについて、ここに私の考察を残しておこうと思う。今この手紙を読んでいる頃の君は、ある程度《SPES》についての知識がある状態だと推測できる。よってその詳細については省くことにする。手が疲れるので』
最後の言い訳がしょうもないことはさておき、君彦は2枚目の続きを読みます。
そこには
- 《人造人間》はシードによって作られることから、シードを倒さなければ《SPES》の壊滅は難しいこと
- シードはあくまで生存本能を満たすことを望んでおり、テロ行為に及んでいるのは配下のだけであること
- シードは地球環境に適合できないという理由で、新たな人間の器を探している
- シードが具体的にどういう事情で地球に適合できないのかが判明すれば、それがシードを倒す弱点になること
- シエスタは未来が視えるというミアに出会い、特例として《SPES》について記述されている《聖典》を見て、入念な準備が必要だと知ったこと
- そのために特異点である君塚君彦を助手として誘ったこと
シエスタが今までの《SPES》についての考察が並べられていました。そして――
『最後に、君たちがこの後取るべき行動を具体的に示してあげたいところであるものの、さすがに私も、1年後の未来を正確に予測することはできない。特に例の体質を持つ君を取り巻く環境は日々変化し、《巫女》でさえ予想の出来ない行動をとっている可能性が高い。けれど、だからこそ私は、君にほんの少しだけ期待をしながらここに筆を置こうと思う。君たちが私ですら思いつかない未来を選択することを楽しみにしながら』
手紙はここで終わります。
「だが悪いな。まさか自分が生き返るなんてルートは、予想外の中でも予想外だろ」
君彦はふっと笑いながら、ベッドに仰向けになって寝ころびます。そしてそのまま目をつむり君彦は就寝しました。
月明りの夜に、君は誓う
君彦がベッドで寝ていると、薔薇のような香りがして目覚めます。
「あ、起きた」
そこには夏凪の姿がいました。
「それで探し物はあったの?」
夏凪と君彦は少し話した後、夏凪はシエスタの遺産について訊きます。
「ああ、シエスタが手紙でヒントを残してくれていた。明日からは、また少し方針を変えて動くことになりそうだ」
とはいっても、まだはっきりした方針は決まってなく夏凪にもアドバイスを貰おうとしましたが、その前に君彦はミアとの話し合いについて訊きます。
「で、夏凪の方はどうだった?」
「うん――大丈夫だよ。その未来は…可能性は確かに存在するって、《巫女》はそう言ってた」
それを聞いた君彦は喜びます!
「だけど、その未来を実現するために具体的に何をすべきかは、まだ時間をかけて考えていく必要があるみたい」
「そうか…いや、でも可能性があると分かっただけで十分な収穫だ」
すると不意に、夏凪は君彦にあることを訊きます。
「シエスタのことやっぱり好きだった?」
「別にあいつは恋人でもなければ友達ですらない、ただのビジネスパートナーだ」
「なるほど、君塚の片思い、と」
「おいこら、勝手に概念をでっちあげるな」
そしてテンションの上がって来た夏凪はさらに君彦に深く訊きます。
「で?で?本当のところ君塚はシエスタのことどう思ってたの?ほらほら、あたししか聞いてないからさ」
「ただのビジネスパートナーってのは訂正する」
「その心は?」
「…少しだけ特別なビジネスパートナー」
「ひゅー!」
「お前やっぱりバカにしてるだろ!」
君塚は体勢を翻し、夏凪の額に強烈なデコピンをお見舞いします!
痛がる夏凪でしたが、「…はぁ。まぁ、でもその言葉が引き出せたならいっか」と呟き、むくりとその場に立ち上がります!
「あたしは必ず、どんな手を使ってでも、シエスタを取り戻してみせる」
夏凪はそう宣言し、君彦に笑いかけます。
【探偵はもう死んでいる】原作4巻前編の感想!
以上「探偵はもう、死んでいる」4巻のネタバレ前半でした!
新たな《調律者》として《巫女》であるミア・ウィットロックが登場しましたね!未来を見通すことができるという少女で、今後も物語のキーマンともなりそうです。
そしてシエスタが生き返る未来は本当に訪れるのでしょうか⁉
4巻ネタバレ後編➡【探偵はもう死んでいる】4巻ネタバレ・感想後編!
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